(21)
となると、説得するのはほぼ無理か。
やむを得ない。
セフィーゼのことに関しては、できれば人の力を借りたくなかったが、ここは当初の作戦通りクロードに頼るしかない。
それにはまず、セフィーゼを孤立させこの場から誘い出さなければ――
「みなさん、ここは僕が引き受けますからどうぞ後ろに下がってください」
方針転換した僕は、セフィーゼを遠巻きに囲む守備兵たちに向かって声をかけた。
兵士たちは僕の言葉に従い、槍や剣を構えたまま大きく後退する。
「ふふ、一対一でやるの? アリス王女もいないのに大した度胸ね」
と、セフィーゼがこぼれた涙をぬぐい、笑みを浮かべて言う。
「でもね、今度は同じ手には乗らないから」
そこは言われなくても分かっていた。
この位置からでは僕の魔法は届かない。つまりセフィーゼの魔力を吸い取ったり、魔法を封じたりすることは単純に不可能だからだ。
対してセフィーゼの風魔法の飛距離はかなり長く、自由自在に飛ぶ方向も変えられる。
間を詰められないように気を付ければ、僕を一方的に攻撃できるわけだ。
すなわち、戦う前から勝負の結果は出ていると言ってもいい。
「――私の風魔法はこの世界で最強。唯一無二」
セフィーゼは目を閉じ、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「今、私は、ユウトを殺す」
くる――!!
と、身構えた瞬間、セフィーゼは瞳を開き呪文をとなえた。
「エアブレード――!!!』
セフィーゼの指先から発生した風が鋭い三日月型の刃に形を変わり、こちらに向かって飛んでくる。
虹色の風は空を切り裂きながら、ほんの一瞬で僕に――
正確に言えば、僕があらかじめ張り巡らせておいた『
「今の『エアブレード』の威力はかなりのものだったね」
僕はわざとセフィーゼを煽るように言った。
「でも、僕の作った防御壁はその程度じゃ破れないよ」
「あーあ、思った通りの展開ね!」
が、セフィーゼも平然と返す。
「『
セフィーゼはそう言ってさらに目を大きく見開き、鬼気迫る様子で、『エアブレード』を狂ったように連続して唱え始めた。
当然、避ける間もない。
魔法によって作り出さ荒れた虹色の風が、まるで台風のストームのように、僕の周りに吹き荒れる。
このまだとまずい。
セフィーゼの魔力が凄まじすぎて、すぐに『
そして防御壁が破られたその瞬間、僕の体はズタズタに切り裂かれてしまうだろう。
だからそうなる前に、僕は行動を起こした。
セフィーゼの攻撃のわずかな合間を見て、大声で叫んだのだ。
「セフィーゼ、こっちだ!! こっちに来い!!」
あとは返事も聞かず、一目散に走りだす。
「な、なによ! ユウト、逃げるの?」
「いいから! 僕を殺したければ追って来い!」
バレバレの罠だと思われたかもしれないが、セフィーゼも最大の敵を放っておくわけにはいかないのだろう。
慌てて僕の背中を追って走り出した。
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