(13)
「ユウちゃん! やるやるやるわよ! ミュゼットがやっちゃうわよ!!」
その時、男爵が僕に向かって大声で言った。
『ガード』の魔法でワイバーンの攻撃を防ぎつつ、ちらりと後ろを振り返る。
すると、メラメラと燃え上がる赤いオーラに包まれたミュゼットが、口の中でブツブ何やら唱えていのが見えた。
よかった。
言葉をほとんど交わさずとも、ミュゼットは僕と呼応し、しっかり連携を取ってくれたのだ。
『
ミュゼットが唱えたのは、ハイオークをこの異世界から消し去った炎の超魔法。
僕が時間を稼いでいる間、長い呪文を詠唱し、その紅蓮の炎を最後のワイバーン目がけ放ったのだ。
ワイバーンはかなり高レベルのモンスターのはずだが、それでもこの『
一瞬にして巨大なフレアに包まれたワイバーンは、わずか数秒で燃え尽きて黒く細かい塵と化し、最後は灰になって風に吹かれて四散してしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ウオッ――!!! ウソッだろ――!!」
全滅したワイバーン部隊を見て、セルジュがやけを起こして叫ぶ。
多分こんな経験初めてなのだろう。
悔しさと焦りがこちらにも手を取るように伝わってくる。
が、それでもセルジュは、自暴自棄になって特攻をしてくるようなことはない。
セルジュの乗るワイバーンは、相変わらず、はるか高く安全な城の上空を飛んでいる。
しかし、僕とミュゼットの魔法のかかった砲弾なら、あそこまで届かないことはないな……。
「ちくしょ――!! 覚えていやがれ――!!」
ついに戦うことを諦めたのか、セルジュが捨て台詞を吐き、僕たちの頭上を一度ぐるりと旋回した後、北の空の方へ飛んで行こうとする。
その様子を塔や城の中から見ていた守備兵たちが、「わっ」と歓声を上げながら外に出てきた。
「やったな、ユウト。さすがだぜ」
と、エリックが僕のそばにより、肩を叩いた。
「いや、みんなの協力があったからだよ」
僕は首を振った。
「砲手の人や、ミュゼットの協力がなかったら何もできなかった」
「あーお前らしいな。――でな、あのセルジュとかいうガキは逃がしてやるのか?」
エリックは空を見上げて言った。
「お前たちの魔法の砲弾なら、今からでも撃ち落とせるだろうに」
「う、うん……」
どんどん城から遠ざかっていくセルジュとワイバーンの姿を見ながら、僕はあいまいな返事をした。
自分の中で、もはやワイバーンという生き物を殺すことに躊躇はなかったが、それでもなお人の命を――それも
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