(12)
ただ、リナの現在の状態を魔法で調べるにはどうしてもスマートホンを使わなければならない。
じゃあスマホはどこにある――
と、部屋の中を見回すと、ベッドサイドテーブルに僕の持ち物を入れた革袋が置いてあった。
きっとロゼットが大切に保管しておいてくれたのだろう。
たぶん中身も無事なはずだ。
「それではユウト様」
そこでロゼットが言った。
「とりあえずは、朝の身支度のお手伝いをさせていただきますね」
「いいえ、それは自分でできます」
早く一人になってスマホを使いたいということもあり、僕はその申し出を丁重に断った。
「それよりロゼットさんたちはメイド仕事にお戻りください。もしかしたら、逃げてきた兵士たちのお世話でお城の中は大変な状況ではないですか?」
「ユウト様、お世話がいたらず本当に申し訳ございませんが、実はその通りなのです。なにしろお城の人口が突然増えましたから――」
ロゼットの顔に、感謝の笑みが浮かぶ。
「メイドにすらそのようなお心遣いをして下さり、本当に嬉しく存じます。さすが
そらから深く頭を下げ、部屋を出て行くロゼットとリゼット。
気を利かせてわざわざ僕のために時間を割いてくれた彼(女)たちだが、本当は猫の手も借りたいくらい忙しいに違いない。
――それにしても、僕はいつの間にか男爵に見込まれていたのか。
うーん、なぜ?
お世辞もあるかもしれないけれど、理由がよく分からない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方、ミュゼットは、着替えのため近くにあるメイドの支度室に行くらしかった。
僕のいるこの部屋で服を着るのは、やっぱり嫌らしい。
「じゃあね、ユウ兄ちゃん。ボク、着替えたらもう一度ここに戻ってくるから」
「え、そうなの?」
「あのね、男爵様がユウ兄ちゃんが目が覚めたらいの一番に話がしたいんだって。で、男爵様の部屋までの案内役をボクが言付かったの。あ、それとアリス王女様もユウ兄ちゃんに早く会いたいらしいよ。――それじゃあすぐ迎えに来るから、それまでに色々用意しといてね!」
タオル姿のミュゼットはそう言うと、廊下に人がいないことを確認し、部屋の外にこっそり出ていった。
その後ろ姿を見送った後、僕はドアを閉め大きくため息をついた。
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