(6)
「さあて誰にも邪魔されず、
ミュゼットは準備運動をするように肩をグルグル回しながらさらに進み、ハイオークのすぐ手前で立ち止まった。
ところがそこまで近づいてもミュゼットはまったくのノーガード。
緊張感のカケラもない。
そんなミュゼットを見て、ハイオークは黄色く尖った牙をむき「グルルルル」とい低い唸り声上げ、巨大な戦斧を持ち直した。
どうやらようやく彼女を“敵”と認識したようだ。
「うーん……そうだなぁ」
ミュゼットは戦闘態勢に移行したハイオークを見上げ、値踏みするように言った。
「デカいだけじゃなくて、少しは楽しめそうかな?」
「キサマ……」
ハイオークがギロリとミュゼットをにらむ。
「イノチシラズメ……」
そうだった。
ハイオークは人語を解し、会話もそれなりにこなすのだ。
「へえーハイオークって喋れんだぁ。すごいなぁ」
と、ミュゼットも感心したように言う。
しかしその言葉とは裏腹に、ミュゼットの態度はハイオークを思いっきりバカにしているようにしか見えなかった。
「ムシケラメ!」
ハイオークもミュゼットに舐められているのが分かったのか、灰色の目におぞましい殺気を宿し、出し抜けに戦斧を天に向かってを振りかぶった。
「シネ――――!!!」
問答無用でミュゼットを頭から叩き切ろうというのだろう。
戦斧をミュゼットめがけ、ぶんっと振り下ろす。
「お! 速えーじゃん!」
しかしミュゼットは涼しい顔だ。
短く口笛を吹いて地面を蹴り、真横へ数メートルジャンプして、ハイオークの一撃を悠々かわした。
「グオオオオオオ――――」
だがハイオークもいきなりミュゼットを殺せるとは思っていなかったらしい。
激しい唸り声を上げながら素早く戦斧を持ち上げると、今度は軽めに振り上げ、ミュゼットの顔面を狙って切りつけた。
むしろ最初の一撃はブラフだったのかもしれない。
この巨体に似合わぬハイスピードな斧さばきに、昨日も何人もの竜騎士が餌食になったのだ。
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