(10)

「あら、みんな少しは反省したようね。じゃあ、ここからはアタクシが仕切らせてもらうわ!」

 と、そこでタイミングよく男爵が宣言する。

「まず、この場にいる全員がそろって私の城――デュロワ城に行く。これは決定事項。ではそのために何をしたらいいか? まずは動けない重症の人の治療よね?」


「それは任せて下さい」

 僕は前に出て言った。 

「できる限りのことはします」


「私も手伝いましょう」

 クロードも横に並び、申し出た。

「ユウト君には及びませんが、ある程度のケガなら私の魔法でも治せます」


「ウンウン、それはあなたたちしかできないことだものね」

 男爵がうなずく。

「じゃあ悪いけれどミュゼットと、三人で力を合わせ大急ぎで頼むわね。――さあ他の人は出発の準備よ! いい? 今は騎士も兵士も、当分身分は関係なしにお互い助け合あっていくわよ! はい、レッツゴー!!」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 男爵の指示のもと、僕たちは早速治療に取りかかることにした。


 魔法での治療が必要な兵士はおよそ150名ほど。

 中でも特に重傷な50名を僕が、残りの人はクロードとミュゼットが担当することになった。     


「あの……」


 回復魔法リカバーを使いながら、僕はクロードに話しかけた。

 さっき助けてもらったお礼を言いたかったのだ。


「クロード様、先ほどは本当にありがとうございました」


「いいえ、そんな感謝されるようなことはしていませんよ」

 クロードは魔法を唱えるのを中断して、僕の方を向いてほほ笑んで言った。


「『リペア』の魔法――あんな切断された肉体をつなげる魔法があるなんて、僕は知りませんでした」


「私もある人にたまたま習っただけです。よかったら後でユウト君にも教えて差し上げますよ」


「ええ、いいんですか? 是非お願いします!」


 クロードの申し出は嬉しかった。

 貴族の彼が平民の僕に、わざわざ魔法を伝授してくれるなんて思わなかったからだ。

 それに、あの魔法は今後必ず役に立つ時がくる。


「お安いご用ですよ。――それで、その代わりという訳ではないのですが……」

 一瞬、クロードが何か訊きたそうに口ごもる。


「何でしょうか? 僕にできることがあれば何でもおっしゃってください」


私事わたくしごとですみません。ユウト君は、ティルファ――ティルファ=ド=ロレーヌという女騎士の消息をご存じありませんか? 第一軍と第二軍の全滅の報を告げる使者として、アリス様の元に向かったことまでは分かっているのですが……」


 ティルファ――


 それはもちろん、僕が命を救ったあの女騎士ティルファのことだろう。

 彼女なら一応、デュロワ城にいる。

 ただしその心は、今はほとんど壊れかけてしまっているが。


 ――ん?


 ティルファの姓は確か――ド=ロレーヌ。

 そしてクロードの姓も……。


 ティルファ=ド=ロレーヌ

 クロード=ド=ロレーヌ


 もしや二人は――


 兄と妹!?

 

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