(7)

「根本的に悪い部分を――まずはその切断された足をつなげないと、レーモン公爵は危険な状態を脱することはできませんね」

 と、クロードがレーモンの体をつぶさに観察しながら言った。

 

「え……?」


 一度切れた人間の肉体と肉体をつなぐって、手術するわけでもあるまいし、そんなことできるのか?

 少なくとも僕の『リカバー』の魔法では無理だ。


「私がやってみましょう、あの、切れてしまったレーモン公爵の足は――ああ、これですね」

 

 クロードはそばにあったレーモンの足の部分を見つけ、ひょいと持ち上げると、巻かれていた布を取って、それをももの部分の切断面と合わせた。

 それから魔法を唱えた。


『リペア!』 


 クロードの手からあふれる赤い光。

 その光は、ドロッとした液体状になって、切れた足と腿の隙間に流れ込んでいった。

 さらにそれから数秒、液体の光は固まり始めた。

 外から見ていても肉と骨をつながっていくのが分かる。


 すごい。

 僕は目を見張った。

 まるで瞬間接着剤だ。


「これでいいでしょう」

 レーモンの足が完全につながったことを確認し、クロードはほほ笑んで言った。

「あとはユウト君、あなたの魔法でレーモン公爵を回復してあげてください」


「――僕が?」


回復魔法リカバーは私より、あなたの方がずっと上ですよ。私はたまたま『リペア』の魔法を覚えていただけですから」

 

 クロードはあくまで控えめだ。

 この人も貴族なんだろうけど、まったくそれらしくない。

 すごく感じのいい人なのだ。

 

「わかりました」

 

 僕は言われた通り、レーモンにもう一度『リカバー』の魔法をかけた。

 すると、今度は確かな手ごたえがあった。


 次第に、レーモンの顔色に血色が戻ってくる。 

 閉じていたまぶたがぴくぴく震え――


「……叔父様!!」


 薄っすらと目を開けたレーモンを見て、リナがまた涙を流す。

 今度はうれし涙だ。


「……リナか」


 偏屈な老人の顔に、かすかな笑みが浮かぶ。


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