(9)

 僕は何か羽織れるような、リナの上半身を隠せるモノはないかと周囲を見回した。

 が、目につくのは竜騎士の死体ばかり。


 だからといって、リナにこんな格好をさせたまま先を急ぐわけにもいかない。

 そこで僕は自分のマントを取って大きく広げ、それでリナの上半身をくるんであげた。


「ありがとうございます」

 リナは恥ずかしそうに言った。

「私のことはもういいですから、どうかアリス様のご様子を見てきてください」


「わ、わかりました!」


 さっき見てしまったリナの美しい胸が頭にちらつき、どうにも気まずくなって、僕はその場から離れアリスを探すことにした。


 とはいえアリスは常に最後尾におり、なおかつ竜騎士にがっちり守られていたのだからあまり心配する必要はないだろう――

 と、タカを括っていたところ、突然マティアスの怒鳴り声が聞こえてきた。


「おい!! アリス様はいったいどうなされたのだ!?」


 冷静なマティアスらしくない、尋常ではない感じだ。


 ――まさかアリスの身に何かあったのか!? 


 そういえば、なぜ今までアリスは大人しくしていたのだろう?

 普段のアリスなら、リナのみさおの危機に、まわりの竜騎士を振り切ってでも前に出て一緒に戦ったはずなのに。


 それができなかったということは、もしや……。

 体のどこかをアンデッドにかじられ、アリス自身がゾンビ化したとか?


 だとしたらシャレにならない。

 アンデッド化した人間を治癒する魔法なんて僕は知らないぞ!


「ユウトこっちに来い!」

 マティアスが大声で僕を呼ぶ。


 これはかなりの一大事らしい。

 僕は青ざめて、アリスの元に駆けつけた。


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