(11)

「クソッ!!」

 焦ったヒルダは大きく後ずさりして叫んだ。

「シャノン! 助けろ!」


 さあ、ここが運命の分かれ道。

 シャノンはいったいどう出る?


 僕は祈るような気持ちでシャノンの方を見た。

 一瞬、お互いの目線が合う。

 

 するとシャノンは口元に微かな笑みを浮かべ、まったく戦う意志がないことを示すかのように、ぴょんと後ろに飛びのいてしまった。


 やっぱり!

 表面上は和解しても、ヒルダとシャノンとの間には修復できない深い溝が出来てしまっているのだ。

 ということは、ヒルダの身によほどの危険が及ばない限り、シャノンは知らんぷりを決め込むつもりだろう。


 これでこちらの勝ちはほぼ決まった。

 僕はヒルダに接近し、魔法使いにとってとどめとなる呪文を唱えた。


『シール!!』


 敵の魔法を封じる緑色の光が、ヒルダの全身を包み込む。


 終わった。

 そして勝ってしまった。

 ヒルダのような強敵相手に自分一人で。


 僕は一呼吸おき、みんなに向かって勝利宣言しようとした。

 しかし、その矢先――


「え……?」


 愕然がくぜんとした。

『シール』の光がヒルダの体からふっと消えてしてしまったからだ。

 つまりそれは、僕の魔法がヒルダにまったく効いていないことを意味した。


 まさか、そんなはずは……。

 何かの間違いだろうと思い、僕はさらに強い魔力を込め呪文を唱える。


『シール!!!』 


 ところがまたしても、魔法の光は瞬時に消滅してしまったのだ。

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