(10)

 ただ、気がかりなのはやはりシャノンの存在だ。

 僕がヒルダに魔法攻撃――『シール』で闇魔法を封じようとした時、シャノンはどう行動するだろうか?


 ……いや、心配するのはよそう。

 おそらく彼女は戦いに手を出してこない。


 なぜならヒルダとシャノンの間にはすでに大きな亀裂が入っている。

 その上、僕がヒルダを殺す気がないことはシャノンも分かっているからだ。

 そこには多少の希望的観測は混じってはいるが……。


 とにかく今はそっちの――つまりシャノンが戦いの間、何もしないでいてくれる方の可能性に賭けるしかない。


「今度はこちらから行くぞ! ヒルダ!」


 僕はヒルダ目がけダッシュした。

『シール』を使ってヒルダの魔法を確実に封じるには、もっと間を詰めなければならないからだ。


「まだやる気か、生意気な!」


 ヒルダは迫ってくる僕を見て、杖を頭上に高くかかげ再び魔法を唱えた。


『ダークフレア!!』


 さっきと同じ爆破魔法のはずなのに、今度は一つの黒いマグマの塊ではなかった。

 野球ボールぐらいの大きさの黒い火の玉が無数に出現し、ヒルダの周りをぐるぐる回り始めた。


「くらえ!」


 ヒルダが杖を振ると黒いマグマの玉がヒュンヒュン飛んでくる。

 ちょうど複数台のピッチングマシンが、一斉に高速ボールを連射してきたような感じだ。


「うわっ」


 超激烈な集中砲火――


 あまりの迫力に足が止まり、思わず顔を両腕で覆う。

 直後「バンバンッ」という大きな炸裂音が聞こえ、僕の周りで小爆発が連続して起こった。

 ほぼ百発百中、すごい命中率だ。


 しかしそれでも『マジックガード』の守りは鉄壁だった。

 何発当っても、魔法の壁はビクともしない。


 見たか!

 ヒルダの闇魔法なんて怖くない。


 光と闇、明と暗――

 ジャンルは違えども、魔力は完全に僕の方が上だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る