(13)

 間違いない。

『スリープ』の効果が切れ、レムスが目覚めてしまったのだ。


 迂闊うかつだった。

 セルジュに気を取られ、レムスの存在をすっかり忘れてた。


 レムスは突然ムクッと起き上がると、あっという間に数メートル飛んだ。

 その先にいたのは――


 僕だ。

 レムスは魔法をかけられた相手をしっかり覚えていたのだ。


 が、それはまったく予想外の襲撃だった。

 当然避けるすべはない。

 すぐ目の前に、レムスの大きな二本の牙と真っ赤に裂けた口が迫る。


 やられる!

 と、思ったその寸前――


 電光石火の如く、アリスが神剣ルーディスを突き出していた。

 剣はズブリと音を立てながら、見事にレムスの喉元を深々貫いた。

 レムスの一番間近におり、かつ反射神経の鋭いアリスだからこそ出来た早業だ。


 アリスがレムスからスッと剣を引き抜く。

 血はほとんど出ない。

 が、レムスはどさりとその場に崩れ落ちた。

 ほぼ即死だろう。


 セルジュはレムスの亡骸を前にして、しばらくあっけにとられていた。

 そして、叫んだ。


「あ、あ、ああああああーー!! レムス――俺のレムスがああああああぁぁぁ」


「覚えておけ!」

 と、アリスは泣きわめくセルジュに言った。

「やられたらやり返す。それが貴様らイーザの専売ではないのだということを!」

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