(17)

「さあ選んでよ。わたしはどっちでもいい、あなたの無様ぶざまな死にざまを見られればそれで満足だから」


 セフィーゼはそう言って、また右手の指先に虹色の風を作って見せた。

 しかしアリスは特に怯える様子もない。

 僕と同じぐらいの年齢のはずなのに、すごい度胸だ。


「ふん、話し合いの余地はないということか」

 アリスの瞳が鋭く光り、腰に差した剣の柄に手を置いた。

「では、力には力で答えねばなるまい」


 ええ、やばい――!

 何の話し合いもなく、しかも僕が呼ばれることなくいきなり戦闘が始まるなんて、これまた想定外だ。

 今のアリスでは、セフィーゼに絶対敵わないのに。


 焦りまくった僕は、アリスを助太刀するため慌てて前へ飛び出そうとした。

 ところが――


 それより早く、思わぬ人がアリスのセフィーゼの間に割って入った。

 すっかり癇癪かんしゃくを起こしたレーモンだ。


「小しゃくなガキめ!」

 レーモンはアリスを守るように剣を構え、叫んだ。

「アリス様にはこのレーモンが指一本触れさせんわ!」


「レーモン、邪魔をするな!」

 いきなりの乱入者に、アリスは怒鳴った。

「お前に交渉を任せたのは失敗だった。いいからもう引っ込んでいろ」


「アリス様! 何をおっしゃいます」


「黙れ! ここはお前の出る幕ではない!」


 そんな二人を見てセフィーゼが、ケラケラ笑う。


「ハハハ、王女と爺さん、仲間割れしちゃってる。こっけいでバカみたい」


「セフィーゼ!」

 ヘクターが苦々しげに言った。

「少し口を慎んでください。あなたはイーザの長なのですよ」


「はぁ、だから何?」

 と、セフィーゼは不満そうにヘクターをにらむ。


「とにかくやっとアリス王女にお目にかかれたのだから、少し話しをしてみてはどうです」


「……わかったよ」

 セフィーゼがため息をついて言った。

「でも、殺すかどうか決めんのはわたしだからね」


 その様子を見て、僕はほっと胸を撫でをろした。

 一応、ヘクターはセフィーゼのブレーキ役を果たしているのだ。

 すぐにでも出て行こうと思ったが、ここはもう少し状況を見極めてみよう。


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