(22)

 すると矢は、まるで標的を見つけた誘導ミサイルのように、上方向にいきなりグイッと軌道を曲げた。

 さらに速さと勢いも急加速する。


 狙うはエリックが『オーク殺し』で付けた眉間みけんの傷口――

 まさしく、猫の額ほどのほんのわずかな範囲だ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 『エイム』


 飛び道具専用の攻撃補助魔法。発射された矢などの武器の命中率と威力を上昇させる効果がある。

 限られた場面でしか使わないマイナーな魔法だが、やはり、術者のレベルが高ければ高いほど精度と威力は上がる。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 



「いけえええええええええええ――」


 ハイオークが僕の前に立った。

 飛んでくる矢など気にもせず、槍を振り上げ狙いを定める。


 次の瞬間――


「ブシュッ!」

 という鈍い音がした。


「ウ……ウ……ウウウウ……」


 ハイオークは一瞬硬直し、うめき声を発しながら後ろによろめいた。

 その眉間には、リナの放った二本の矢が深々刺さっていた。 


 やった――のか?

 と、固唾かたずを飲んで見守っていると――


 ハイオークはそのままの体勢でしばらく耐えたのち、ついに、大音響とともに地面に仰向けに倒れた。

 それからしばらくの間、ハイオークはその強大な手足はヒクヒク痙攣けいれんさせていたが、その動きも、やがて完全に止まった。


 終わった。

 死闘の末、僕たちはハイオークを倒したのだ。




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