(18)

『オーク殺し』はハイオークの眉間みけんに深々と突き刺さっていた。

 さすが特効武器、長槍なんかとは比べものにならない威力だ。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおお――!!」


 天地を揺るがすような叫び声とともに、ハイオークはドスンと両膝を付いた。

 確実な手ごたえを感じたエリックが、眉間から『オーク殺し』を引き抜く。

 その途端、ハイオークの額から、不気味な緑色の血液が間欠泉のように大量に吹き出した。


 しかし同時に、支えを失ったエリックの体が空に浮いてしまった。

 もう『リープ』の魔法効果は切れている。

 あとは下に落ちるのみだ。


 そこでエリックはなんとかバランスと取ろうと、ハイオークの胸を蹴って、その弾みで地面に着地しようとした。


 ところが――


「キサマ……!!」

 ハイオークは怒りの声を発し、右手でエリックの体をぎゅっとつかんでしまった。


 あんな深手を負わせても、まだ死なないのか!

 ハイオークの硬い額を貫いたのだから、『オーク殺し』の威力は本物だったはず。

 が、それ以上に、ハイオークの生命力が強かったのだ。


「シネ!!!」


 ハイオークはエリックの体を思いっきり放り投げた。

 エリックの体は数メートル飛んで地表をバウンドし、そのまま勢い余ってごろごろと転がった。


「エリック!!」 

 僕は叫んだ。


 が、エリックはあおむけに倒れたまま、ほとんど動けない。

 よく見ると右足があらぬ方向に曲がっていた。おそらく足の骨が砕けてしまったのだろう。


「あ、浅かったか……」

 エリックがかろうじて頭を上げ、ハイオークを見てつぶやいた。

「……ったく、し、しぶとい化け物だぜ……」


「キサマダケハ、コロス……」


 ハイオークはよろめきながらも立ち上がり、エリックの方に向かって歩き出した。

 生き残りの竜騎士たちが飛びついて止めようとするが、手負いのけものはさらに凶暴になっていた。

 みんな力負けして振り落とされてしまう。



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