(5)
シスターは大勢の兵士の好奇の目にさらされながらも、ひるむことのなく、聖職者としての
「アリス様、お呼びでしょうか?」
と、マリアは
「シスターマリア! ティルファを――ティルファを助けてくれ」
「ティルファ様がいったいどうなさったのです」
「わからぬ。ひどいケガをしているのだ」
マリアは血だらけのティルファの前にひざをついた。
「これは……」
マリアの顔が曇る。
「……全力を尽くしますが、私の力では難しいかもしれません」
「いや、マリアならできる」
アリスがマリアの肩をつかんだ。
「頼む、ティルファは私のかけがえのない友なのだ!」
必死に
友人の命を救いたい一心なのだろう、アリスは完全に王女の仮面を外している。
「お待ちください、アリス様」
様子見ていたレーモンが口をはさんだ。
さっきより厳しい声だ。
「なんだ! レーモン。お前の話を聞いている暇はないぞ」
アリスは恐ろしい顔をしてレーモンをにらみつける。
離れて見ている僕も、思わずビクッとしてしまう迫力だ。
だがレーモンはアリスを無視し、マリアに尋ねた。
「シスターマリア、治癒魔法を使うのには時間がかかるのか?」
「はい。このケガではだいぶ……」
「具体的には?」
「……おそらく数刻は」
「そうか――」
レーモンはアリスの方に向き直って言った。
「アリス様、残念ながらティルファを治療する
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