第8話 NIKON製炊飯器
昨日、ご飯を炊いている時に思い出した事がある。
10年ほど前にマニラ近郊のカビテに住んでいた頃だ。日本から持ってきた海外用の200ボルトで使えるシャープの炊飯器を使っていた。
ある日突然スイッチが入らなくなってしまった。壊れたのだ。バラしてみたが原因が分からない。マイコン炊飯器のマイコンという奴が壊れたようだった。仕方ないので近所のSM(シューマート)というショッピングモールに入っている電気屋に行った。
店に入ると前歯に矯正器具を付けた女性店員が笑顔で寄ってきた。間近で見る笑顔の矯正器具には青い飾りが付いていて、アクセサリーとして着けていたようだ。
「ナニ サガシテマスカ?」
「炊飯器」
「アナタ、チュウゴクジンカ?ニホンジンカ?」
「日本人だよ」
「スイハンキ ニホンセイ イイヨ。NIKON ガ イイネ オススメ」
「ニコン?」
「NIKON シラナイカ? ユウメイナ ニホンセイ」
炊飯器の液晶ディスプレイの上にはNIKON の5文字。恐るべし、中国製偽ブランド商品。嬉しくなって買ってしまった。確か約700ペソ。
家に持って帰って早速ご飯を炊いてみる。3合程の米を研ぎスイッチを入れる。3分もしないうちに蒸気が上がり始める。15分で炊飯が終了し「ピー ピー」とアラームが鳴って保温に切り替わる。
早い・・・流石NIKON.。日本製だと炊飯器まで仕事が早いのか。
炊き上がったご飯を確かめて絶句。内釜の周辺部の米がバリバリになっている。食べられるのは中心部だけ。
最初から最後までフルパワーで炊いているのだろう。日本に持って帰ってNIKON のサービスセンターに調整を頼んだら、どんな答えが帰ってくるかと思うと笑いが込み上げてきた。
NIKON 製炊飯器は一度しか使わずに近所の人にあげてしまった。
その他にも、KENWOOD製のトースターも嬉しくなって買ってしまった。これは2年近く働いてくれた。
とにかく中国製の電気製品が多い。決まって日本製の様な名前のメーカーだ。有名なのが「ハナビシ」の扇風機やトースター、ミキサーだ。今現在、ウチには3台の扇風機が有る。2台はパナソニックで1台はハナビシだ。買ってから1ヶ月後には首を振らなくなった。ミキサーもハナビシで1週間で壊れたが保証期間内だったので修理して使っている。
パラワンに来てからは、ご飯は鍋で、ガスで炊いている。停電が多いのも理由には有るが、電気で炊くよりも美味しいご飯が炊ける。フィリピンの米でも、いいものを選んで炊き方を工夫すれば美味しく炊ける。
ビーチでバーベキューの時などにオニギリを作って持っていくと、他の日本人から
「これ、日本の米?」
と、言われる位だ。
日本に居た時には当たり前だっが、今は美味しいご飯を食べると幸せを感じる。毎食、最初の一口はご飯だけを食べるのです。
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