第7話 狂犬病騒動
フィリピン犬を飼っている。よく行くビーチにある有料コテージのオーナーの所で生まれた犬で、いわゆる雑種だ。生後10日程の時に出会い、その1ヶ月後に連れて帰って来た。
ヘルメットの中に丸くなって収まってしまう位だったのが、1年9ヶ月が経った今では15キロを越える立派な番犬になっている。
この番犬が迷惑なことに毎朝6時にドアを激しくノックして私を起こしてくれる。家に入れてやると満足して眠る。そして8時になると散歩を要求して絡み付いてくる。
犬の散歩には注意が必要だ。こっちはリードを付けて散歩しているのだが、他の犬は飼い犬でも野犬のように勝手に走り回っている。その数も多い。
うちの犬は雄なのでメス犬には愛想がいいが、殆んどの雄犬とは気が合わない。走り回っている雄犬で気が強い奴は、こっちが自分のテリトリーに入ると向かってくる。喧嘩させる訳にもいかないので石を投げて追い払う。
フィリピンには未だに狂犬病が残っている。犬に無料で予防注射してくれる催しも有るが、何も気にせずにエサだけやっていればいいという飼い主も多い。
狂犬病を持っている犬に噛まれて発病すれば、100%死に至るだけに怖い。
私自身、2年程前に子犬に噛まれた事がある。知り合いから貰ってきた犬で身元の確かな犬だったので何も心配しなかったが、一緒にいた女に真剣な顔で病院に行こうと涙を流された。仕方ないので大きな病院に行くと、日を変えて3回の注射が必要で費用は18000ペソだと言う。約4万円!
費用に驚いていると親切な看護婦が「アニマル・バイト・センター」の存在を教えてくれた。(動物に噛まれたら来なさいという場所だ) 公的な機関で費用が安いという。
昼食後、バイクに跨がり教えて貰った場所に行くと、昔の場外馬券場の売り場の様な窓口が並んでいて、人が溢れかえっている。窓口で注射の件を聞いた。
「犬に噛まれたんだけど注射してくれるか?」
「今日の受付は終わり。明日の朝7時に来て」
「そんなに早く来ないとダメなのか?」
「一日に注射出来る人数が決まってる。朝7時なら大丈夫」
「なるほどね。料金はいくら?」
「明日と明後日の二回の注射で2000ペソ」
「二回でいいの?」
「大丈夫」
「蛇に噛まれた場合も一日の注射人数は決まってるのか?死んでしまうだろ」
「ヘビは別。直ぐに注射する」
「わかった」
こんなやり取りをして、家に帰ってきた。結局次の日には注射に行かなかった。俺が犬に噛まれた事を女が忘れていたので、俺も口に出さなかった。
フィリピンに来たら野犬には注意が必要。可愛いと思っても手を出さないこと。
うちの犬は(今、私の横で腹を出して仰向けに寝ているけど)狂犬病の注射と5種混合のワクチン。フィラリア予防とノミ・ダニ駆除と予防の薬など完璧にしている。年間に掛かる薬代を計算すると14000ペソも掛かっている。
もう少し利口になって欲しいものだ。
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