第31話 鍛錬開始!
タオルと着替えを受け取り、身体の水気を拭き取っていく。ティアナとウナには申し訳ないが一旦部屋の外に出てもらった。
「その……ソラよ、男の価値は大きさではないから気にするでないぞ」
「はい?」
頭を拭いているとタイガさんが話しかけてきた。
別に俺の身長はそれ程低くは……その目は一体どこを見ているんだ。タイガさんの視線はある一箇所に固定されていた。
「あの、測ったら日本人の平均サイズより三ミリは大きいかったんで小さくはないはずです」
「なぜ平均の情報があるのだ……まぁそれはいい。
その大きさのまま硬くなったとしても満足させるのは難しいぞ。手先だ、手先の器用さを磨け」
なぜ朝っぱらから猥談をせねばならんのだ。
扉の向こうには年頃は娘がいるのに……まさか、そういう時にがっかりしないようにあえてなのか?
だが、男として言っておかなければなるまい。
「一応言っときますけど、大きくなった時の話ですからね!」
「なに?! デカくなるのか! いやまて、普通は硬くなるだけだぞ」
うん? 何か認識にズレがあるな。
「いえ、硬くなった時多少なり膨張しますよ?
だいたいこれくらいに」
「なんだと……獣人以外はそうなのか?」
「他の種族は知りませんけど、少なくとも日本人はそうです……(たぶん)」
友達なんていなかったから比べっこしたりとか、自分以外のが大きくなるとこなんて見た事は無い。
いや、友達いたとしてもそんな事しないか。
動画とかだとモザイクで見えない以前に女体の方しか注目しないからなぁ。
獣人のは大きくならないらしい……なんか無駄な知識が増えたな。
「(ねぇねぇウナちゃん。
アレ、大きくなるんだって)」
「(えぇ?! あのサイズになるんだと可愛らしくなくなるわね……)って、別にそそそそこまで興味ないわよ!」
扉の隙間から二色の瞳がこちらを覗いている。
なんだろう……見られ慣れたのかあんまり恥ずかしくなくなってきた。
開き直って、扉の方を向き身体を拭いて着替えていく。あえて上から。
生憎露出狂の気はなかったみたいで大きくはならなかった。目の前に
「(ねぇウナちゃん、こうなったら私も脱いで入ってくべきかな?)」
「(おバカ! そうゆう事は親の見てない所で夜にやるのよ……)って、まだ早いわよ! もっと段階を踏んで、その……抜け駆けしないょぅ……」
「段階って何するの?」
「それは……その、私達にはまだ早いわよ!」
お、異世界にもトランクスあるんだな。
着替え終わって扉を開けると、顔を真っ赤にして狼狽えるウナをティアナが質問攻めしていた。
二人と入れ替わり洗面所を出て食堂へ向かう。
洗面所からは「い、いいから顔を洗うわよ!」と叫ぶウナの声が響く。
タイガさんは
本日の朝食も真に美味でした。
メニューは鳥五目ご飯に味噌汁、
鳥五目ご飯は鳥肉、ゴボウと人参にたぶん椎茸とエリンギに似た茸を出汁と醤油でお米と一緒に炊き上げた
味噌汁は昨日と同じ具材に加えてゴボウと鳥肉が合わさり、鳥肉で作った豚汁——鷄汁と化した代物で出汁と味噌の旨味に鳥の油が加わり絶品だった。
蒸焼きの鳥は、しっとりとした仕上がりで噛むと鳥の旨味と微量の脂が染み出してジューシーでありながら余計な脂は落とされたサッパリとした
鳥の種類は頑固鳥と言うそうで、昨日俺が気絶している間にタイガさんがダイゴさんの釣りの様子を見に行った時に貰った釣果がこの鳥らしい。
振りかぶって投げた釣針がたまたま飛んでいた鳥に引っかかって捕まえたらしい。
ちなみに魚は一匹も釣れなかったそうだ。
チキンサラダの鶏肉は蒸焼きよりさらに脂を落とし、パサっとしているがサラダの野菜の水分と合わさってちょうどいい塩梅で美味しかった。
「ごちそうさまでした。美味しかったです。
なんかやけに鳥肉づくしでしたけど」
「ああ、それは今日から鍛錬が始まるからよ。
身体を作るにはまず食事からよね」
それでタンパク質多めの朝食だったのね。
そうなると、筋肉つけるとこから始まるのか。
「あの……ネコナさん、活性の魔法を使うみたいな事をお母さんが言ってたので食事に気を使わなくて大丈夫ですよ。補給食を用意していると思うので」
「あー……あれ、新しい方は美味しいけどモソモソしてるよね」
「ティアナよ、アレはミルクに溶かして飲む物の筈だが……」
プロテイン的な物があるようだ。
「まぁ、本当は頑固鳥が新鮮なうちに食べちゃいたかっただけよ」
「締めてから時間が経つと硬くなるからな」
それ以降は鳥の話が続いた。
いつの間にか用意されたお茶を飲みながら。
「そろそろ時間か、ティアナとウナちゃんは着替えてきなさい」
「はーい」「分かりました」
タイガさんの指示を受けて二人は部屋へと戻っていった。
そういえば、何故かウナが俺のパジャマの上を着ていたな……下はハーフパンツを履いていたが。
ティアナはティアナで、二回りは大きいシャツに俺のパジャマの下を履いていた。
俺のパジャマは帰ってくるんだろうか……。
「ソラよ、二人が着替えて降りて来たらマシヴの所へ鍛錬に向かえ。ああ、俺達は付いて行かんぞ。
パジャマの試作品を見てくるからな」
昨日の今日で早いな。
いつ見せに行った……って、気絶している間か。
パジャマについてタイガさんと話していると着替え終わった二人が降りて来た。
昨日と同じ動きやすい格好だな。
俺は洗面所で受け取った着替えがすでに運動用の物だったので着替える必要はない。
「いってらっしゃい」
「「「いってきまーす」」」
ネコナ母さんに見送られ家を出てマシヴさんの所へ向かう。
「パジャマをティアに言われて着てみたけど、良いわねアレ。とっても寝心地が良かったわ」
「でしょ! パジャマの下も良かったけど、やっぱ上も着ないとって感じだったよ」
「タイガさんの話では郷でも作るらしいよ。
今日は試作品を見てくるって」
「「本当!?」」
道中はパジャマの話で盛り上がった。
ネコ科の獣人は寝る事には並々ならぬ関心があるらしい。
「やあ! 待ってたよソラ君! 早速だけど鍛錬を始めようか!」
マシヴさんは運動場の前で待っていた。
有無を言わさぬ勢いで運動場へ連れて行かれる。
「待ちなさいマシヴ! 急ぎ過ぎよ。ほら、ウナもティアナちゃんも運動場の方へいらっしゃい」
マチヨさんがティアナとウナを連れて運動場の方へやってくる。
「いやぁ、新しい鍛錬を試せるから楽しみでね」
「それは私も楽しみだけど、まずは準備運動と柔軟をしてからよ」
「そうだね! 昨日ソラ君から教えてもらった体操から始めようか」
テンション高めのマシヴさんに促されラジオ体操を始める。五人で。
ラジオ体操も終わり続いて柔軟へ。
「まず新鍛錬法の前準備として
そうマチヨさんが呟くと、身体が何かに引っ張られるようにして柔軟運動をさせられる。
誰かに押してもらわなくても柔軟ができてる。
「じゃあ続いて
言われた通りにしていると、マシヴさんが少し距離をとって隣に立つ。
手を俺とマシヴさんの方へ向けたマチヨさんの手に魔法陣が浮かんでは消えていく。
そしてマチヨさんが柏手を打つと、マシヴさんと俺の身体の同じ位置に魔法陣が浮かんでいく。
大きい関節から始まり、指の関節へと身体の動く部分を中心に数多の魔法陣が浮かび消える。
マシヴさんに浮かぶ魔法陣は赤く、俺に浮かぶのは青い。
「連結完了。マシヴ、準備できたわ」
「よし、じゃあソラ君。動くよ?」
いや、動けないんですが……っ!?
マシヴさんが肩や膝などを回し始めると、身体が勝手に同じ動きをし始める。
「よし! 身体も温まったし始めようか。
俺はもうこの鍛錬から逃げる事は叶わない……。
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