第284話 心通じた!

 口で言っても、猫には言葉が通じないのだろうか? いや、そんなことはない。

 部屋から出て、キッチンから呼ぶと、ちゃんとついてきてくれる。

 だけども、ここのところあまり餌を食べてくれなかった。


 5,8キロあった体重が一気に5キロになってしまい、戸惑った。

 それになんだか、最近甘えん坊。

 これって、死期が近づいているの!? 歴代の猫たちは寿命が近づくとそうなっていた。


 お友達とDMしていても、カクヨムしていても、前脚で腕や足をくいくいってひっぱる。

 なにか言いたいことがあるらしいんだ。

 わたくしは、ちょっと注意深く観察することにした。


 ドアの前でお座りするのは、ここを通りたい、という意味。

 ドアを開けてやると、ドアマットの上でお座りしてこちらを見る。

 それはわたくしを待っている、という意味。


 そしてわたくしが後をついていこうとすると、先導して廊下を歩く。

 先導! これは歴代の寿命パターンではない行動だ。

 寿命の時は、わたくしがなでると後をついてきた。


 大丈夫だ、まだ! そして、きっと食事をしない原因はほかにあるんだ。

 そう思って、スコちゃんが近づいてきたときは、そっとそっと撫でて、まるで赤ちゃんかお年寄りに寄り添うような気持で触れ合った。

 彼女は落ち着いた。


 わたくしは口でしゃべるのではなく、心で念じて話しかけるようにした。

 すると……。

 心で話すと、言うことを聞いてくれるようになった。


 母の部屋でくつろいでいると、ウッドチェアの上でなにやら悲し気な顔をしているので、どうしたのか聞いてみた。

 なにか、苦しんでいるのかと思ったの。

 そうしたら、逆に質問が返ってきた。



(妄想語り入ります)


『どこから声を出してるの?』


「念派。テレパシーだよ」


『……』


「かわいいかわいいスコちゃん。なにをしていても、なにをされても、かわいいと思っているよ。腕や足に噛みつかれても、お尻をかじられても、踏まれてもかわいい可愛いと思っているし、カクヨムだってかわいいと思って事実を書いているよ」



 と言ったら、スコちゃんびっくりした顔をした。



「かわいいスコちゃん。おとなしくて静かで気品があって大好きよ」



 するとスコちゃんは目を細めていたけれども、すぐに目を剥いて私の背後に目をやった。



「どうしたの?」


『どこが気品があるのって言ってるのが来てる』



 わたくしは、神霊の類かなと思ったけれど、心に思うままを念じた。



「スコちゃんは気品たっぷりよ。今そうだったわ」



 念じて、あごと耳の後ろをそっとそっとなでた。



「ねえ、どうしてごはんたべてくれないの?」



 たずねると、



『食べられないから』



 女の子に特有の拒食症かと思った。

 わたくしは一生懸命念じた。



「お願い、食べてちょうだい」



 スコちゃんは部屋を出て、わたくしの後をついてきてキッチンで餌を食べてくれた。

 病気じゃなかったんだ!

 わたくしは空になった餌皿を洗って、もう一つパウチを開けた。


 しかしスコちゃん、部屋に戻るわたくしの後をついてきてしまう。

 遊びたいというから、何が好き? と尋ねたら「追いかけっこ」という。

 わたくしが追いかけるのかな? と思ったら、スコちゃんはわたくしを追いかけるのが好きなんだそうだ。


 そうか、キッチンまで追いかけておいで。

 そして餌を食べておくれ。

 そう念じた。


 スコちゃんは餌を半分だけ食べて、部屋に戻ってきた。

 だけど、こんな風に気持ちが通じるのって、やっぱり寿命の時が多いので心配。

 後悔のないように、幸せな猫生を送らせてあげたい。






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