08.怪獣津波を乗り切ろう!
第六層からはマス目内が地形変化を伴うようになって今は岩でゴツゴツして走り難いがウニモグなら問題はない。問題はないけれど迂闊に速度を出して走れば転倒もありえるのでここからは慎重に進む。
とは言っても怪獣と遭遇するたびに相手の攻撃で自滅するか跳ね飛ばすかのどちらかなので特に問題なく?進む。
浅い川を渡河した所で、遠方で土煙が猛々と上がる。薄目で眺めていみるとエリマキトカゲぽい怪獣が大量に突進してくる。地平線が全て怪獣で埋まっていて余白が少ない。怪獣七分に余白三分てな感じだ。
「えっ!?おぃ!!」
突然のことで対処しようにも逃げ場がなくてウニキャンを停止して動けないでいると防御結界に突っ込んだ怪獣は吹っ飛ばされて消滅。残りはそのまま通り過ぎていった。
「何だったんだ?」
そのまま突き進んだ怪獣たちは後ろに回ってUターンして戻ってくる。
「ど、どうしようか?」
「わふ?」
結局何もすることはないし特に作戦もないのでそのままお茶を飲みながら待つこと小一時間。ひたすら突進してくる怪獣になすがままにされながら待っていると最後の怪獣も防御結界にぶつかって儚く消えていった……。
「やっと終わったねー」とか言いながら先を進むことにした。
……
さて少し時間を遡っての同場所。最深部アタック隊キャラバンの
チーム・デルタの輜重隊はベースキャンプへ向かう途上にあった。ベースキャンプは第一〇層に設営されるのが通例で今回も同様に設営されている。第六層からは一面が岩場で足場が悪い。魔導車は通れないほどの荒れ地なので人力か馬に荷物を括り付けて運ぶしか無いところだ。マスごとの仕切りも見えないので本当に見渡す限り一面岩場が遠くまで広がっている。岩石砂漠と言ったところであろう。
「隊長ぉー!どこかのチームの魔導車がやってきます!」
「おいおい、冗談だろ?こんな岩場で魔導車だと?」
とは言いながらも隊長は双眼鏡を取り出して隊員が指差す方向を見やる。
「まっ、まじかよ……」
確かに見たことのないタイプの魔導車が岩場を走っている。それも軽快に……。輜重隊隊長は役職上、仕事で使えそうな魔導車のリサーチは常にしていたが、それでも見たことないタイプだったのだ。各国でオフロード車が開発はされていて、似たような用途の魔導車はあるにはあるのだが、目の前を走っている魔導車は次元が違う。
「あれ、うちの隊にも欲しいですね……」
「まったくだな……」
そうしているうちに光の粒子が集まって大量の怪獣が出現した。この遺跡で時々起きる怪獣津波だ……。
「大丈夫か!?あの魔導車!!」
「……」
隊員たちは怪獣で埋め尽くされた岩石砂漠を呆然と見守るしかなかった。
「あの魔導車はどうなった?」
「たぶん、転倒して踏み潰されたのでしょう……」
暫くして怪獣津波が去って土煙が収まって、隊員たちは信じられないものを見ていた。そこには何事もないように件の魔導車が佇んでいたのだ。そして何事もなかったように動き出して走り去って行った……。
隊長と隊員たちは全員開いた口が塞がらない状態で見送ったのだった……。
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