第3章
第27話 女神見習いと瞬間移動(1)
メルさんが天界へ戻ってから数日が経過したーー
あれだけぎゅうぎゅう詰めでむさくるしかった教会も今では元通りで、既に街を去った冒険者も多いという。
本当、メルさんに会うためだけにこの街に来てるんだ……
暑い日差しの中、汗をかきながら森の浅い部分で薬草採取をしていると……
ちなみに森の浅い部分はかつて村があり広場などの痕跡が色濃く残っていて、井戸の水もまだ生きているので冒険者が採取や休憩によく利用する。遠い昔に森に飲み込まれ村は廃村になったらしい。
そのあたりでよく薬草が見つかるので度々足を運んでいる。
閑話休題。
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【交信】
《慈悲の女神 フィラ》から交信されています。
[はい(許可)] [いいえ(拒否)]
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一瞬、拒否しようかと思ったけど出ることにした……わたしはどこかのつるぺた駄女神様と違って[いいえ]を押したりしないのですよ。
「はい」
『見習いちゃん、久しぶり~。なんか知らないうちに冒険者してるのね~?これ多分便利だよ~。じゃあね~』
と、何かくれたようである。
こちらが話す間も無く【交信】が切れてしまった。
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【交信】
《慈悲の女神 フィラ》との交信を終了しました。
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「何くれたのかな? ……ロクでもないものじゃなきゃいいけど」
せめて使えるものならいいなと思い、何をくれたのか履歴で確認してみると……
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ー履歴ー
【愛の女神 メルディ―ナの加護】が授けられました。
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 4444ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 4445ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 4446ポイント
【感謝ポイント】1ポイント獲得しました。累計 4447ポイント
【瞬間移動】が使用可能になりました。
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瞬間移動となっていた。
「……瞬間移動って」
瞬間移動といえばあの瞬間移動かな?
もしそうだったらすごいものくれたんだ、駄女神様。ロクでもないとか言ってなんかすいません。
「瞬間移動かぁ……えーっと、あの木の前に移動したい!」
これで移動できるのかな? あー、でも自分だけの空間もいいよなぁ。
瞬間移動と知り興奮した私は、ステータスの説明も読まず、とりあえず目に入った木の側へ移動しようと試してみた……ら案の定使いこなせず、どこかわからないところまで飛ばされた。
見渡す限りが深い森と濃い霧で全体的にどよーんとした雰囲気だ。
「ああ、やっちまった……」
濃い霧を警戒しつつ、生い茂る木々の隙間から差し込むわずかな光を頼りに、かなり魔力を込めた女神の聖域を展開する……これで大分安全が確保できる……はず。
「とりあえずここに居ても始まらないか……」
ナイフで木に印をつけつつ、あたりの様子をうかがう。
歩きながら、目に入った珍しい薬草を袋に入れ探索をしていると……ほどなくして大きな湖に行き当たった。
「水はきれいそうだけど、なんか魔物に引きずり込まれそうな雰囲気だよね……」
嫌な想像をしてしまい、湖から一定の距離を保ちつつ探索……そこから歩いて5分ほどの場所かな……小屋?を発見した。
小屋は朽ち果てているといっても過言でなかった。今はかろうじて雨風がしのげる程度にしか残っていないが、かつては石造りの頑丈な小屋だったことがうかがえる。
扉を、押すと簡単に開き……中を覗くと埃だらけではあったが、ひと通り家具も揃っていた。
「うーん、湖があるから釣り小屋とか?」
しかし家具も所々壊れている様で人の気配はない……少なくともここ何十年も人の手は入っていないみたい。
「んー、それにしては綺麗なような……」
小屋を歩き回りつつ、心眼をかけるとひとつ不思議なものを見つけた。
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〈????の像〉
かつて神????が戯れに作ったもの。
????の形をしている理由は不明。
状態維持と魔物よけの効果がある。
魔力不足によりほとんどの機能が停止しかけている。
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「へー」
レベルが足りないせいでところどころ読めないけどおかみさんが教えてくれた神様が置いてった魔道具ってやつみたい。
壊れてなければ貴重なんだろうけど、今のところガラクタ同然かな……あ、でも神様の像なら高値がつくかも。よし……マジックバッグにでも入れておこう。
「とにかく少しここで休憩しよう……しっかり瞬間移動も調べたいし……『瞬間移動 検索』」
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【瞬間移動】
移動するときに行き先を強く思い浮かべると魔力と引き換えに移動できます。
イメージが不確実な場合、瞬間移動の失敗の確率が高まります。失敗した場合、移動がキャンセルされます。
瞬間移動しようとした場所に人がいたり、物がある場合、移動時に自動的に調節されます。
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どうやら移動するときに行き先を強く思い浮かべることがコツみたい。
「失敗しても移動できないだけでよかった……身体が千切れるとかだったらヤバかったね」
さっきは家と畑とか自分だけの空間が欲しいなぁと一瞬、考えてしまっていたため、ここに飛ばされた模様……にしてはちょっと距離あったけど。まぁそういうことにしておこう、うん。
「ふーん」
今度こそ余計なことは考えず、さっきいた広場に戻りたいと念じる。
「おおっ! 移動できた!」
……けどせっかく道に迷いながらも珍しい薬草を見つけては採った薬草袋が無かった。
「はぁ……こんなことなら売る用と自分用の整理なんて後回しにしてストレージに入れておけばよかった」
あれ、さっきの小屋に置きっぱなして来ちゃったんだ……もったいない。
「……戻るか」
今度はすぐに移動せず、色々チェックしてからにしよう。うん、確認は大事!
なんか凡ミスばっかりだし……もうちょっと気をつけないと。
まずはかなり重たい石を持って広場の端から端に移動しようとしてみた……ら、石はそのままで自分しか移動出来なかった。
「重量制限があるのかな?」
ただ、あの小屋にさえ戻れれば薬草はストレージに入れるから、重さは関係ないかな? んー……でもこのままだとまた凡ミスしそうだしなぁ。
もう少し練習して使いこなせるようになってからにしよう。
広場は他の冒険者が来ることもあるので、人目につきにくい場所へ歩いて移動する。
「このあたりなら大丈夫かな……」
練習しつつも……
あの小屋に置いたままの薬草袋を取りに行かなくちゃ。
薬草が枯れるまでにいかなくちゃ。と変な焦りを感じていた。
歩いて行こうにも道も距離も方角すらわからないから瞬間移動するしかない。
ひたすら練習を続け、ようやく石ごと移動できるようになったので
「あの小屋へ行きたい、あの小屋へ行きたい! あの小屋へ行きたい!!」
もう1度あの小屋へ瞬間移動……できたー!
練習のおかげか問題なく到着した……変なところに着いたらどうしようと心配していただけに小屋についてホッとした。
「ふぅ……あ、あった!」
薬草袋を無事回収し、間違いなくストレージへ入れる。かなり疲れたのでさっさと引き上げよう。
一応、ザッと見回し忘れ物がないかチェックーー
「よし、忘れ物は……ない!」
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