第162話 決着
「タケオさん! タケオさーん! 起きて! 起きて! 起きて…… お願い…… 死なないで……」
ん…… この声は……
アリアだ。
あれ? なんでだ?
俺は確か門に魂を喰わせて死んだはずじゃ……
うぅ…… よく思い出せない……
どこか変な空間にいて、誰かに会っていたような……
あれが世にいう臨死体験ってやつなのか?
とりあえず無事だということを伝えてあげないと……
ギュッ
あまり力は入らないが……
アリアを抱きしめる。
「え…… タ、タケオさん?」
「生きてるよ…… 心配かけたみたいだな…… ごめ…… って、うぷぁっ!?」
んー!? アリアがキスをしてくる! 嬉しいけど、尻尾が俺の首を絞めてるって!
苦しい! 入ってる! 頸動脈入ってるって!
ガバァッ
何とかアリアを振りほどく!
「はぁはぁ…… もう一度死ぬところだった……」
「ふえーん…… タケオさん、心配したんですから……」
アリアは安心したのだろう。
顔をぐしゃぐしゃにして泣き始めた。
俺はもう一度アリアを抱きしめる。
会いたかったよ……
もう離さないからな。
アリアが泣き止むまで俺は抱きしめ続ける。
そしてようやくアリアが泣き止むと……
あれ? そういえば……
晴れてる。青空が広がっている。
雪は降り積もっているが白い雪だ。
「止んだんだな…… 世界は救われたんだ……」
「え? どういうことですか? 私何も覚えてないんです。目が覚めたらタケオさんが倒れてて……」
そうか、ずっと眠ったままだったもんな。
俺はアリアに今まで何があったのか話すことにした。
ラベレ砦が襲われたこと。
それは罠だったこと。
ルカが俺と同じ星の出身だったこと。
そしてリァンとユンのこと。
本当の狙いはアリアだったこと……
話しているうちに思い出した。
俺はララァに会ってきた。
そして神様から新しい加護をもらったような……
そのおかげで俺は生き返ったのだろうか?
確認してみよう。自身に向け分析を発動する!
名前:タケオ
年齢:???
HP:99999 MP:99999
STR:99999 INT:99999
能力:杖術10
ギフト:
時間操作:大年神の加護
空間転移:猿田彦の加護
多言語理解:思金神の加護
分析:久延毘古の加護
魔銃:吉備津彦の加護
気功:日本武の加護
湧出:少彦名の加護
New!
限界突破:伊邪那岐の加護
復活:伊邪那美の加護
増えてる!?
それにステータスがなんか一桁増えてるぞ!?
限界突破って……
もはや人間じゃないな。
これについては後で説明しよう。
俺だって理解が追い付いていないのだから。
「そ、そうだったんですか…… 私が狙われてただなんて……」
「あぁ。でももう終わったよ。これでアリアが狙われることもない。戦争も終わり……?」
あれ? あそこに倒れてるのって……
間違いない。リァンだ。
遠目からでも分かる。
俺はアリアと共にリァンのもとに。
すると……
「生きていましたか…… ははは…… すごいですね…… 貴方はいつも私の予想を裏切ってくれる……」
「…………」
リァンは明らかに老けていた。老人のようだ。
留佳の加護が解けたのだろう。
彼の正体は諸葛亮孔明。
本来なら五丈原で死ぬはずだった。
それが留佳の加護を受け、ここまで生き永らえた。
だが留佳の加護を失った今は……
「う……!? ごほ…… ははは、もう長くはありません……な……」
「そうだな…… なぁリァン、留佳は帰れたかな?」
「大丈夫でしょう…… ちゃんと見送りました……からな…… タケオ殿…… 最後に貴方のような強者と戦うことが出来た…… 楽しかった……ですよ……」
「あぁ。俺も伝説の軍師と手合わせ出来たんだ。誇りに思うよ」
「ありがとう……ございます…… タケオ殿、よく聞くのです…… これからは貴方がこの大陸の全てを統治していかなければなりません…… それは戦うことよりも難しいことです…… ですが貴方なら出来る…… 民を幸せに…… してあげるのです…… それが私達に出来なかった……悲願ですから……」
「分かってる。リァン…… いや最後だ。言わせてもらう。諸葛亮孔明、あんただって平和を望んでいた。だから劉備に仕えていたんだろ? 別に魏や呉を否定するわけじゃない。
だが劉備は侠客だ。常に民のことを考えてきた。だからあんたは弱小と呼ばれる劉備に仕えたんだ。俺が劉備ほど徳があるとは思わんが、俺が望むのも皆が笑顔で暮らしていける世の中だ。
ここまで来たんだ。最後まで責任は持つつもりだよ。だから…… 安心してくれ」
リァンは静かに微笑む。
そして静かに息を吸って……
「そうですか…… 心残りはありません…… 最後に貴方のような方に出会えて幸せでした…… 違う時に産まれていれば…… タケオ殿に仕えるのも……」
「ははは、畏れ多いよ。伝説の軍師を部下に持つなんてさ」
「…………」
応えは無かった。
リァンは目を閉じる。
静かに息を吐いて……
「さらばだ、リァン……」
伝説の軍師が逝った。
この世界で出会った最強の敵が静かに息を引き取る。
俺は勝ったのだろうか?
策においてはリァンの足元にも及ばなかった気がする。
俺が今この場に立てているのは運がいいからだ。
最初からリァンが相手だったら立場は逆だったかもしれない。
「タケオさん…… 終わったんですか?」
「あぁ。すまんアリア。リァンを弔ってやりたい。手伝ってくれるか?」
「はい……」
俺はリァンとユンのために墓を掘る。
すまんな。こんな簡単な墓で。
あんたら英雄にはもっと立派な墓がよかったかもしれないな。
俺は異世界で出会った英雄に語りかける。
二人を埋めてから俺とアリアは手を合わせた。
「リァン、ユン、成仏しろよ……」
「我ら魔族の神よ…… 憐れな魂をお救いください……」
優しいなアリアは。
敵だった二人のために祈れるなんて。
さてと…… これで終わったな。
「アリア…… 帰ろうか」
「はい!」
俺とアリアは歩きだす。
二人で雪道を踏みしめて。
ザッザッザッザッ
「ねえタケオさん。これからどうするんですか?」
と雪道を歩きながらアリアが聞いてくる。
これからか……
一応考えてることはある。二つほどね。
一つはまだアリアには秘密なので言わない。
でももう一つは……
「もう少しこの世界に留まる。戦争は終わったが、まだやることがあるからな。戦後復興ってやつだ。これからもっと忙しくなるぞ。休む暇なんてないかもしれない。
アリア、手伝ってくれるか?」
「はい!」
ふふ、いい笑顔だ。
でもさすがに疲れたな。
一週間くらい休暇をもらおうかな。
アリアとずっと裸のまま過ごすなんてのもいいかもしれん。
「あー、タケオさんエッチな顔してるー」
「ソ、ソンナコトハナイゾ」
なんて馬鹿な会話もしつつ南に向かう。
「まぁそれは冗談としてだな。俺は最後まで責任を取るつもりだ。この世界に住む人々で平和に暮らしていける世の中を作る手伝いをする」
「ふふ、じゃあ今まで通りですね」
ははは、そういうことだな。
それじゃ帰ろう。
みんなが待つ場所にな。
「ねえタケオさん、手を繋いでもいいですか?」
「もちろんだ」
俺達は二人手を繋ぎ南へと進む。
アリア、これからもよろしくな。
俺の想いが伝わったのか、アリアの尻尾が俺の腰に巻き付いてきた。
ギュウゥゥゥゥッ
「アリア…… 苦しいんだが……」
「わ!? こら、離れなさい!」
「はぁはぁ…… ははは、もうすっかり元気みたいだな」
「ごめんなさい…… どうしても言う事を聞いてくれなくて……」
構わないさ。
これからもずっと一緒にいるんだから。
そう、復興が終わったら俺はアリアにプロポーズするつもりだ。
そしてアリアがついてきてくれるなら共に日本を目指して異世界転移をする。
もしアリアがこの世界に留まりたいなら……
まぁその時はその時だ!
こうして俺達の戦争は終わった。
そして最後の戦いである戦後復興が俺達を待っている。
何の心配も無い。
俺には皆がいるからな。
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