第85話 復興 其の二
俺は獣人の国マルカを復興するため、現在会議を開いている。
今しがた食料生産をテオに説明し、彼は引き受けてくれた。
日本で言うところの農林水産大臣に任命したってとこかな?
一応役職名とか必要だろうか?
「テオ、あんた何て呼ばれたい?」
「どういうことだ?」
「いやな、俺の世界では名前の後に役職名をつけることが多かったんだ。例えばテオ農林水産大臣とか」
「結構だ…… 名前で呼んでくれ。ややこしくて覚えられん」
とお断りされてしまった。
アリア達に聞いても同じ反応だったので役職名は必要無いな。
それでは次の項目に進もう。レジュメ通りだと……
「フリンとサシャ、二人にはノルの町の土地管理、住宅建設の全てを任せたい」
「僕が!?」「やった! フリンと一緒ね!」
フリンは驚いていたが、サシャはフリンと仕事が出来ることを喜んでいる。
こいつらは恋人同士であり、世に言うバカップルではあるが仕事はしっかりやっている。
ヴィジマでは獣人の難民のため、簡易的ではあるが、家屋を作りそこに住まわせていた。
彼らのおかげで雨風に晒されることなく、ヴィジマでの日々を過ごすことが出来たわけだ。
その実績も考慮すると、彼らに任せるのが最良だろう。
一度二人が建てた家を見せてもらったが中々見事だった。
だがフリンは、内装、部屋数、寝室の広さなどこだわりすぎるところがある。
サシャは少々ずぼらな性格なので、二人に組ませるとちょうどいい家が出来上がるはずだ。
役職名をつけるなら、国土交通大臣かな?
「ふふ、私達なら楽勝よ! 皆が幸せに暮らせる家を作ってあげましょ。住めればいいのよね!?」
とサシャは自信満々だ。住めればいいのは間違いないが、少しはこだわって欲しいな。
フリンはそれを諌めるように……
「駄目だよ。家っていうのは幸せを育む場所なんだ。僕達がそこに住むことを想像してごらん。清潔な玄関、広いキッチン、二人が愛を語り合うリビング。
そして二人が愛を確かめあう寝室……」
「フリン…… もうバカなんだから……」
ほんとバカよね。二人は自分達の世界に旅だってしまったようだ。
止めとけよ。ほら、テオの額に青筋が立ってるぞ。
「まぁまぁ、ほら二人は若いんだし」
とフォローするが、テオの怒りは収まらない。そりゃそうだよな。実の父親の前で娘とその彼氏がイチャイチャしてたら誰だって面白くないだろう。
ヤバイな。そろそろ止めないと、あいつらキスとかし始めるぞ。
「ごほんっ! フリン、サシャ、そこまでだ。席に着いてくれ。二人にはまだやってもらいたいことがある。
ここは元は宿場町だった。多くの商店があったんだが今は何も無くなってる。もしノルの町で商売を再びやりたい獣人がいたら彼らのために店を作ってくれ。
元通りにするには細かい図面もいるだろうから、話を聞いておいてくれ」
「うん!」「分かった!」
と元気よく返事をしてくれる。
ここまでで食料生産、そして住宅建設の割り振りは終わったな。
まだ話は終わってないが少し休憩にしよう。
話し疲れてしまった。
「それじゃ十分休憩にしよう」
「あ、あの…… 質問が……」
アリアが手を上げる。質問か。
「はいアリア君!」
「あ、ありがとうございます。どうでもいいかもしれないんですが、私達三つの国をまとめて国家連合を作ったんですよね。
新しい国の名前ってあるんですか?」
名前…… しまった。何も考えてなかった。地球ではEU、欧州連合とかが有名だが、ここは異世界だし……
適当でいいだろ!
「アリア連合とかでいいんじゃない?」
「駄目です! 何で私の名前使ってるんですか!? 私の顔見て適当に言っただけですよね!?」
「ソ、ソンナコトハナイ……」
「片言で言わないで下さい!」
しかしだな。正直名前については何も思い浮かばない。
いかん、俺にはネーミングのセンスは無いのだ。
昔飼っていた犬はポチだし、猫はタマだ。
ルネに出会った頃、彼女に名前をつけようとしたが俺の案は尽くボツになった。
しょうがない。ここは適材適所だ。名付けはアリアに任せよう。
「アリア、君がこの国の名前を考えてくれ」
「わ、私ですか!?」
「大丈夫だ。俺はアリアを信じている!」
「ただ丸投げしてるだけですよね!?」
「ソンナコトハナイ。ほら、ルネの名前だってアリアが考えたじゃないか。俺よりは確実にセンスはある。頼めるか?」
「前半が片言でしたけど…… も、もしも変な名前になっても知りませんからね!」
おぉ! アリアはちょっと怒りながらも承諾してくれた。
ふふ、一体どんな名前になるのだろうか? 楽しみだ。
さて休憩だ。外に出て一服しよう。天幕を出るとすでにテオがパイプを吹かしていた。
せっかくだ。テオが持ってきてくれたタバコを吸ってみよう。
紙にタバコの葉を適量…… で、クルクル巻いて完成だ。
火をつけて深く吸い込む……
「ごほっ…… 結構重いな。でも美味いよ」
「そうか? ははは、情けないぞ。これでも割りと軽い葉を用意したのだ。他の種類のタバコも栽培してある。今度軽いのを持ってくるよ」
そうか、楽しみだ。
チラッ
ん? 視線を感じる。獣人がこちらを見ているな。鼻を押さえている。匂いが苦手なんだな。
むぅ、仕方ない。所詮喫煙者はマイノリティだ。吸わない者のことを考えると、異世界とはいえ好き勝手に吸うわけにはいかないだろう。
サシャとフリンに喫煙所を作ってもらおう。
それをテオに話すと笑われてしまった。
「ははは、タケよ。お前は王にはならないとは言ったが、結構好き勝手にしてるじゃないか」
「まぁいいじゃないか。給料も貰わずに働いてるんだ。これぐらいは大目に見てもらおうぜ」
さて一服も終わったし会議を再開しよう。
天幕に入るとアリアとバカップルが楽しそうに会話をしている。
「すごい! さすがアリアだね! いい名前だよ!」
「うん、とってもかわいいと思う。サシャもアリアくらいセンスがあればなぁ……」
二人はアリアを褒め称えているではないか。
名前? そうか! 決まったんだな!?
「えへへ…… そんなことないですよ。でも自分も好きな言葉なんです。
あ、先生! 名前考えておきました!」
「そうか。ありがとな。それじゃ会議を再開する前に発表を頼む」
俺達は席に着く。そしてアリアは一人俺達の前に立ち……
「えー、ごほん…… では発表します! 国家連合の名前ですが
ラベレ? おぉ、中々語呂もいいじゃないか。ラベレ連合。繋げて言っても違和感も無いし、何より覚えやすい。
「いい名前だな。何か意味があるのか?」
「はい! ラベレは魔族の言葉で自由っていう意味があるんです。
私達はこれまでの戦いで勝ち、自由を取り戻しました。でもまだ戦いは続きます。だけどいつか真の自由を勝ち取るんです。
だ、だからラベレって名前にしたんですけど…… おかしくないですよね?」
最後自信無さそうにしていたが、俺は満足だ。
パチパチパチパチパチパチッ
皆笑顔でアリアを称える。これは満場一致だな!
ガタッ
「では改めて会議を行う! 我がラベレ連合の記念すべき会議だ!」
「グルルルル…… 名前を考えたのはアリアではないか。鬼の首をとったように言うな」
とベルンドが突っ込み、皆は笑う。
ではそのベルンドの仕事について話そう。
「ベルンド君! 君を復興大臣に任命する!」
「グルルルル…… 復興大臣?」
分からないようだな。
では何をするのか説明してやるか!
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