第324話 誰かの記憶〜タンポポ〜

「あっ!タンポポだ」


不意にそんな事を呟く彼女にタンポポとはなんぞや?と聞いてみる。


「タンポポって何?」


彼女は楽しそうに綿毛の一杯ついた花を見せびらかしてきた。


「◯◯見ててよ...ふ~」


彼女が息を吐くと一斉に綿毛が空に飛び出す。


それを見た私は目を輝かせながら夢中になって空を見上げました。


「綺麗...、まるで空に雪が舞い上がった見たい...」


「空に向かって雪が舞い上がる?、ふふっ...〇〇なんかへ~んなの!」


ただ言葉で風景を表現しただけなのに、何故か彼女に笑われてしまう私。


「変じゃないよ!、本当に綺麗な物は言葉で言い表さないと...」


「言葉で言い表す...?、花言葉?」


「花言葉って?」


私が効くと彼女は上機嫌で答えてくれました。


「花言葉って言うのはね...、そのお花の本当の意味なんだって」


「本当の意味?、じゃあタンポポはなんていうの?」


彼女は笑いながら私の質問に答えてくれます。


「タンポポの花言葉はね...、愛の信託とか幸福って言われてるんだ~」


私はその答えに思わず顔をしかめてしまいます。


「花言葉って2つもあるの?」


「ううん...、本当はもっと一杯あるから多すぎて覚えられなかったんだ~」


「なにそれ...」


私は彼女の答えに少し笑ってしまいました。


「あっ!今◯◯笑った!!」


「...笑ってないよ..」


「いや笑ったでしょ!!」


「「ふふ...」」


いつのまにかお互いにおかしくなって笑いあっていました。


その日はタンポポについて調べた後、手を繋いで帰りました。


(花言葉...、愛の信託に幸福...か)


ちらっと彼女の素敵な笑顔を見て今の状況の事を幸福と言うのだと思う私なのでした。





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