第217話 後悔

 〜クティル城客室〜


 式典が終わり、母さんはお城の中で家族の皆と話をしていました。

 私は母さんを見つけると労いの声をかけます。


「母さんお疲れ様!」


 封印祭後に私は母さんの元へと駆け寄ります。


「カリンんちゃん...」


 私の名前を呼ぶ声はどことなく弱々しく疲れているような感じを受ける。

 母さんの術式があまりにも複雑かつ精錬だったのを思い返し疲れるのは当然だと思いました。

 でも、それでも私は湧き上がるこの感情を止めることができなかったのです。

 あんな術式を私も組んで見たいという知的好奇心が私の心を突き動かし次の行動に移させたのでした。


「母さん、私も母さんみたいな封印魔法を扱えるようになりたい!」


 何気ない一言。

 でも私はこの言葉を母の前で並べてしまった事を後で後悔する事になろうとは、言葉を発した時には思いもしないのでした。


「カリン...ちゃん...」


「母...さん?」


 なぜでしょう。

 母さんの表情がかなり物悲しく見えます。

 私は何か変な事を聞いたでしょうか?。

 ただ私は母さんと同じくらい高位の魔術に憧れているだけであり、この言葉にそれ以上の意味はありません。

 でもそれはあくまでもでの事だったのです。

 母さんがこの言葉の意味をどう思っているかなんて考えもしていませんでした。

 突然私の頭に雨が降ったのかと思い天を仰ぐと、そこには両目から大粒の涙を零す母の姿がありました。


「母さん!?どうしたの!?」


 思わず声を上げる私。

 突然泣き出した母をただ呆然と見つめる続けていると、母は私を抱き寄せこう呟く。


「ごめんなさい...、私が不甲斐ないばかりにあなたにそんな感情を湧き立たせるなんて...、私は母親失格ね...」


 ここが式典場で無く良かったです。

 賢聖エルカのすすり泣く声が客室に響き渡り、家族全員をなんとも言えない気分にさせてしまいました。

 部屋の外から聞こえてくる笑い声の方が大きいにも関わらず、私にとっては母さんの小さな泣き声の方が大きく感じたのでした...。



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