第214話 魔女ってそんなに怖かったの?

 私が式典場へ向かうと、既に会場は人で一杯です。

 こんなに大勢の人が集まるなんて思っても見なかった私は思わず口をぽか〜んと開けていました。

 だって所詮は儀式みたいなものでしょ?、せいぜい20人くらいでさっさと済ませる物だと思っていたのですが、これではまるで超売れっ子アイドルのサイン会...、ううんそれ以上の人数が集まっているように思えました。

 “賢聖”の姿を一目見ようと言う人が多いのでしょうか?。


「よう!カリン!」


「お兄ちゃん!」


 どうやら兄が先にこの場に着いていたようです。


「母さんがもうすぐ出てくるからな、俺たちはここから応援してようぜ」


「母さん今から一体何をするの?」


「母さんはな、今から悪い魔女を再封印するんだよ」


 兄さんから話をもう一度聞いておきましょう。

 以前に聞いたのですが、一応もう一度この式典の意味を復習しておきたいのです。

 兄さんから聞いた話をざっくりと纏めるとこうです。

 母さんの封印の魔法はだいたい1年周期で切れるらしい。

 ただ封印するだけであれば城の中でやればいいと思ったんですけど、どうやらそうもいかないようです。

 こうしてわざわざ国民全員の前で封印を行うのには理由はあるのでした。

 “この町に住む人は皆魔女が怖い”。

 この感情は7年前から存在するようで、今も国民全員の心の中で芽生え続けている“不安”なのです。

 それを少しでも和らげる為にこうして毎年皆の前で封印の儀式を行うのは目的だとお兄ちゃんは教えてくれました。

 ふと疑問に思った事があるので兄に聞いてみました。


「魔女ってそんなに怖かったの?」


 その質問を兄にしてみた所、なぜか彼の体から汗がダラダラと流れて落ちていくのが見えたので質問を変えました。


「あっ...えっと、今日はいい天気だね〜...、アハハハハ...」


「あ...ああそうだな!」


 無理して声を高くした彼の姿が“魔女”の恐ろしさを表しているように思えました。


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