第202話 準決勝

「いっせの〜で...3!」


 私は素早く2本の指をあげると同時に、他2人も2本ずつ動かしていたので得点にはなりませんでした。

 それを見た私は変な汗が流れ、ごくっと息を飲み込みます。


(この2人...できる!)


 このゲーム、普通に考えれば別に必勝法とかはない物なのですが、なんか精神的な強さが反映されているような気はします。

 なんでかはわかりませんが、相手の動きを読む事が出来る人の方が強い傾向にあると思えるのでした。


「次は私だな...、いっせの〜...で2!」


 即答!。

 私は指をあげることはなかったのですが...。


「あっ...」


 プラム先生が両手の指を上げていた為得点になりました。


「おやおや、私の為にわざわざご苦労...」


 良い感じに煽りを入れる父さんを睨見つける先生。


「良くもやってくれたわね...、覚えてなさい!」


 次は先生の番ですが、なぜかなかなか宣言をせずにじっくり考えています。

 20秒ほど時間をかけると急に数字の宣言を始めました。


「...、いっせの〜で...0!」


 私は宣言されるよりも前に指を動かそうとしたのですが...。


(あれっ!?、指が動かない!?)


 おかしなことですが、なぜか指が少しも動かないのです。

 それもゲームに使う親指だけが動きません。


「誰も上げてないから一つ落とすわね」


 そう言って片腕を落とす彼女を見てやられたと思いました。


(プラム先生絶対に魔法使った!大人気ない!)


 ただのゲームでそこまでして勝ちたいのでしょうか?、なんだか子供っぽく見えてしまったので私が微笑んでいると...。


「おい!、さっきのはアリなのか?魔法を使ったと思うのだが?」


 父さんがそう言うのも無理はありませんが、先生は涼しい顔をしています。


「私はただ数字の宣言をしただけで何もしてないわよ、イカサマだって言うのなら証拠を見せなさい」


 調子に乗った表情で父さんに指を突きつける先生。

 何を言ったとしてもそう言われれば終わりです。

 魔法に証拠もクソもありません、宣言した瞬間だけ私達の動きを封殺してしまえば絶対に勝てるし、宣言をし終われば魔法を解けばいいのですから...、実にセコイ方法ですね!(笑)。


「そっちがその気ならこっちも考えがある...」


 そう呟いて先生の頭の上にハエたたきのような物を出現させました。


「何よこれ...」


 不満そうな表情を浮かべ、頭上に浮かび上がるハエたたきを見つめる彼女に父さんは呟きました。


「貴女がゲーム中に不正をしていないか分かる道具とでも言っておこうか、もしも何かの魔法を使った瞬間にそれが君の頭を叩くから気をつけてくれたまえ」


「魔力感知で動く魔道具と言った所かしら?、妙な物を錬成してくれたわね」


「別に君が不正をしていないと言い張るのなら気にしなくて良いのではないか?」


 ぐぬぬと唸る先生に対し優勢を得た父さんは笑っています。


(このゲームでここまで本気になる人たち初めて見たんだけど!)


 そう思いながらもゲームは続いていくのでした。

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