第192話 俺は...よぇぇ...
息が切れるほど走り去った先は誰もいない家でした。
ガチャリと自室に閉じこもり布団を覆いかぶさります。
(俺は...よぇぇ...)
ただただ心の中でそう呟く。
自分の弱さを棚に上げて親父に八つ当たりするなんて、格好悪いを通り越して愚鈍であると言わざるおえない。
「何で俺は...」
天井を見上げながら今日起きた事を振り返ると、思い出すあの言葉。
「武器錬成なんてありふれた魔法を魔術の一環とするのもおこがましいわ...」
これが脳内に何度も響いてくる。
まるで自分の魔法が魔術では無いような言い草に腹が立つ。
この言葉が反復する度に俺の中に悔しさが募って行く。
(くそっ...、何で俺はこんなにも弱いんだ...、なにが王国を守る騎士だ...)
自分で自分を追い詰めているような気分になるが、それほどまでにあいつの言葉が心に突き刺さっているのだ。
ため息混じりにふと起き上がりベランダにでる。
夜風に当たって頭を冷やそうと考えたのだが、俺がベランダに出ると親父の姿が見えたのですぐさま隠れるように部屋に戻った。
(まずいな...見られたか?)
嫌な予感が的中し、父さんが俺の部屋の扉をノックしてきた。
「ローシュいるんだろう?、早く出てこい」
ここまで知れているのであれば仕方ありません。
俺は部屋から顔を出してこう呟きました。
「何?」
「ここに居たのか...」
父さんは俺の部屋に入ってきて椅子に腰掛け、俺はベッドに座りました。
「ローシュ、お前は充分に強い、いずれ私より強くなれるかも知れない素質は持っているんだ、だから今回負けたからと言って何も恥じることはない、お前はまだ若いのだからな」
「...」
親父はそう言ってきたが、俺の心境は複雑だった。
「親父...、なら何で剣を教えてくれない?、俺はこんなままじゃ誰一人守れないんだ...、それこそその時が来る前に俺は死んでいるかもしれない...、強い奴にはわからない弱者の悩みって物が俺にはあるんだよ」
「...ローシュ...」
少し言い過ぎたか?、父さんの表情が少し悲しそうに見える。
静寂が辺りを包み込んだ時、彼は口を開く。
「...、お前は強い、それこそ私よりもな...」
「嘘だ...、俺はミライとかいう輪廻教の奴に手も足も出ずにやられたんだぞ!、それを見てなかったあんたじゃないだろ!!」
ついつい喧嘩口調で話してしまう。
こんな状態が続き彼が何を言ったとしてもまともに受け取る気はない俺。
そんな時だった...。
「お兄ちゃん?」
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