何か大きなイベントが起きた時は大抵、変なフラグが立っている。
俺の手持ちには何もない①
4月。3月よりかは少し暖かくなるがまだまだ肌寒い今日、俺は6:30に設定していたアラームを合図に自室のベットから重い体を起こし一階の洗面所へと向かった。歯を磨いて顔も洗い終えるとリビングへ向かい、いつも通りまだ時間が少しばかりあることを確認してからソファーへ腰を掛けテレビへと目を移した。
「今日は4月8日!お昼頃から温かい日差しが出て洗濯日和!ですがまだまだ寒いです・・・。しっかりと防寒対策をしてお出かけしてくださいね~!」
見慣れたお天気コーナーのお姉さんが意気揚々と喋っている。毎朝、見ているはずなのに名前すらわからない。そしていつの間にか担当している人が別になっていたりする。ふと思うと不思議だと思う。
「あら?今日から学校なんだっけ?」
リビングへと入ってきたスーツ姿の母親はソファーに座っている俺を見て確認するように訪ねてきた。
「うん」
そう。今日は4月8日。新学期開始日で今日から俺は高校二年生となる。「はあ。今日から学校かよだりぃなああああ」なんていう感情は多少はあるがさほど強くはなく最早なれという方が正しいのか作業ゲーだと俺は思っている。今自分が置かれている状況から逃げることが出来なければそれを変える事すらもできない。強いてできる事とすればその現実を甘んじて妥協していくことくらいだろう。これから先も俺の場合きっとそうだろう。まあ、住めば都理論とどこか似ている。
「朝ごはんは食べてく?」
「今日は食って行こうかな」
基本俺は朝、体にものを摂取する事が苦手で普段学校がある日は朝ごはんを抜いていることが多いが、今日は気分的に食べていくことにした。
朝は食わなきゃ元気でないぞ!なんていう輩がいるが別に食べたくなくて食べないんじゃなくて単純に食欲がわかず食べることが出来ないのだ。そりゃあ、食べていった方が三、四限に急に来る空腹フィーバーをくらわなくて済むとは思う。
そんなことを思いながら俺は食卓に着く。基本、うちの朝ご飯といえば昨日の残り物にパンかシリアルなんかを付け合わせた簡易的なものだ。俺はパン派か白飯派か問われると問答無用で白飯に手を上げるだろう。だがしかしなぜだか朝になると白飯はとても重く感じてしまう。なので朝に限り俺はパンへ浮気する。
「もう二年生なんて早いものねえ」
「んー」
「あんたもう来年は受験生なんだからしっかり勉強もしときなさいよ。来年なんてあっという間に来ちゃうんだからね」
「んー」
テーブルにはトーストした食パンに昨日の残り物の肉じゃが、そして付け合わせのサラダといったようなラインナップだ。淡々とそれを食す俺へ向けいつものように母親は軽いおせっかいを焼いてきた。それをいつものように軽くあしらう俺はそっけない返事を繰り返した。
「ごちそうさま~。それじゃ、ママもう出るから食べたらちゃんと洗っときなさいよ」
「んー」
「あっそうだ。学校行く前にパパの水替えしていってくれない?今日朝するの忘れちゃって」
「んー。了解」
そして母親はあらかじめ準備していたバックとコートを持ち仕事へ向かっていった。
俺は言われた通り食べ終わった食器をキッチンで洗い、残った肉じゃがにラップをかけ冷蔵庫へ入れた。そしてそそくさとそのままの足で家の奥にある和室へと進んだ。ふすまを開けると俺は仏壇の前に置かれている座布団へ座り手を合わせ、そのまま花の入っている花瓶を手に取り洗面所へと向かった。
水の入れ替えを慣れた手つきで済ませもう一度その花瓶を仏壇の前へ置いた。
「行ってきます。父さん」
もう一度座り手を合わせ笑顔で遺影に映る父さんに声をかけた。
そして予め用意していた制服やバッグを取りに自室へと向かう。一通りの作業を終え玄関に向かい少し薄汚れ履きなれたローファーに足を通し玄関を開けた。
「さむ」
お天気コーナーのお姉さんの通りまだまだ外は寒かった。
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