第55話 剣部優刀-つるぎべゆうと-
「エクセレント! マーベラス! 素晴らしい! 《想念》と一体化したなんて!」
そんな俺を見て、向かい合った《
人間そっくりの背格好は、まるで人の成り損ないと相対しているようだった。
「バケモノの分際でえらく
長く生きた《想念獣》ほど――特に人型は──人と同じ言葉を話しはじめる。
そしてこれだけこなれた言葉を話すと言うことは、つまりそれだけ長きに渡って悪行を働いてきたという事に他ならなかった。
「闘志もむき出しでなによりだ。それよりも、君が凄いのかな? それともその黒猫の《想念》が凄いのかな? それともその両方かい? いや理由などなんでもかまわないか、大切なのは結果だ! 実に、実にインテレスティング! エキサイティング!」
「いつまで上から目線で品評会をやってやがる……!」
偉そうに人を評してやまない《
「おおおおおぉぉぉ──っっ!」
カウンターで繰り出された拳を身を屈めてかわしつつ、向かって左脇側をくぐり抜けながら勢いそのまま、屈んだ姿勢を戻し上げる流れで、《
「ぐふ――」
《
それでもまだ優位な状況ではあったものの、俺は軽くフェイントを入れてからスッと斜め後ろにステップすると、一旦距離をとった。
軽量級は機動力を使ってなんぼだ。
足を止めての打ち合いはスタイルじゃないからな。
再び《
「どうだ、いい挨拶代りにはなっただろう? あまり俺を舐めてんじゃねぇぞ。俺の名は
そう名乗りかけて、思いとどまった。
だって復讐の場にはもっと
「俺の名前は『
それは既に捨ててしまった――捨てざるを得なかった――
だが一族の復讐を果たすこの場面において、これほど相応しい名前が他にあるだろうか?
否!
そんなものはありはしない――!
「4年前、お前に滅ぼされた退魔の一族・
姉さん。
父さん、母さん。
義父さん、義母さん、そして一族のみんな――。
「そして覚えておけ――今からお前を討滅する者の名前だ」
見据える先には、ときおり蒼炎の混じる紅蓮の
俺の復讐戦がついに幕を上げた――。
待ち焦がれた仇敵とのリベンジマッチとあって、思わず我を忘れて血気に
がむしゃらに突っ込んで勝てるような相手じゃない。
戦略を組み立て戦術を用意し、どうにかして必殺の《
いつも以上に繊細な動きと、勝負所での大胆不敵な駆け引きが重要になってくるだろう。
ただ、いつもと違っているのは――、
「今日は出し惜しみはなしだぜ……!」
《
いける。
全力で戦える。
ならば、悩むことは一つもない――!
「俺が持ちうるすべてを使って! いや出せる以上の力を振り絞って、今日ここで! 今この場所で! 必ず《
そのためなら死をもいとわぬ決死の覚悟でもって。
たとえ刺し違えようとも――。
「俺が《
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます