エピローグ だから俺は男の娘ではなく女の子にもてたい

第56話 逃走

 そして終業式の告白に戻る。


「別に男の娘でも良いじゃない。子供はできないけど結婚はできるんだから」

「まぁー寧々さんはもう子供のことまで考えてるんですね。ウフフ」

「ちょっと清子。からかわないでよ」

「わ、私は本気だよ、翼君」

「私も本気です翼さん。もう挿入の準備も整っておりますよ」

「清子、お前が一番破廉恥よ」


 男の娘三人が、ガヤガヤ騒いでいる。


 この状況は確かに男子なら一度は体験してみたい光景だろう。


 自分のために可愛い子が自分を奪い合う姿を。


 でもこの三人は何度も言うが男の娘だ。


 つまり、下半身にアレが付いているということだ。


 翼もこの三人のことは嫌いではない。


 むしろ、かなり好意をよせている。


 でもそれは友達の好きであり、異性の好きではない。


 別の男の娘の人格を否定するわけではないが、やはり翼は女の子と付き合いたい。


 それだけは譲れない一線である。


「翼は誰を選ぶの。もちろんあたしよね」

「いいえ寧々さん。そんなガサツで乱暴な子はモテませんよ。私みたいな上品な子が翼さんは好みだと思います」

「どの口で言ってんのよ、この下品破廉恥清子」

「わ、私は精一杯翼君に尽くすよ」


 三者三様。


 それぞれ自己アピールしながら翼に詰め寄ってくる。

 何度も言うが、これが女の子だったら翼も両手を上げて喜んでいただろう。


 でも、こいつらは男の娘だ。


 三人の熱い眼差しに耐えられなかった翼は回れ右をして、逃げ出す。


「ちょっと待ちなさい翼。まだ答えを聞いてないわよ」

「翼さん、逃げるなんて悲しいです。お待ちください」

「ま、待って……」


 翼が逃げ出した瞬間、他の三人も翼を追いかけるために走ってきた。


 夏の暑い昼下がり。


 ただ立っているだけでも汗をかくのに、全力で走ったから体中が汗で大変なことになっている。


 それでも翼は走り続ける。


 あの三人に好かれるは正直言って嬉しい。


 でも、


「俺は男の娘じゃなく女の子にモテたいんだよ―――」


 翼の悲鳴は夏の青空へと吸い込まれていった。

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