第53話 真実

「元凶はあいつらか」

「寧々さんも気づいたんですね。もしかしたら翼さんはただの餌なのかもしれません」


 寧々と同時に清子も気づいたようだ。

 だが、菫一人は気づかなかった。


「えっ、どういうこと?」

「話は後よ菫。まずあいつらは問い詰めないと」

「寧々さんに賛成です。答え次第では容赦しません」


 寧々と清子はドスの効いた声で意思疎通すると、そのままその集団の方へ歩いていく。


「ちょっとあんたたち、話があるんだけど」

「みなさん、静かにしてくださいね。素直に話してくれればすぐに終わります」


 まさか誰かに声をかけられるとは思わなかったのだろう。

 五人全員が、ビクンと体を跳ねて硬直する。


 その後、恐る恐る後ろを振り向く。


 最初、そのグループは警察だと思ったのだろう。

 でも明らかに同い年の子と分かると、表情を和らげる。


「なんだよ、二組の斉藤か。今良いところなんだからどけよ」

「はぁー、そんな言い方ないでしょ。それよりこれはどういうことよ、なんで翼と白河がデートしてるのよ」


 寧々は男子生徒の胸倉を締め上げ、情報を搾り出そうとする。


「そんなの二組の斉藤には関係だろ」

「なんだってー」


 二人はけんか腰に言い合い、まさに一触即発の雰囲気を醸し出している。


「はいはい、二人ともこんな大通りで大声出しては迷惑ですよ。それにそんなに大きな声を出すと二人に気づかれてしまいますわよ」


 清子は一旦冷静になるように、二人を促す。

 二人もようやく自分たちがヒートアップしていることに気づき、さらに周りのお客さんからも冷たい視線を浴びていることに気づき、一旦冷静になる。


「それで、翼と白河はなんで付き合ってるのよ」

「そんなことは斉藤には関係ないだろ」

「ちょっと加藤さん、こちらによろしいですか」

「えっ、なんで私」

「実はこのような写真を私は持っているんですが、こんなのが拡散されたら加藤さんは大変ですよね」

「なんで、私が援交の時のアヘ顔写真をあなたが持ってるのよ」

「それは秘密です。これをばら撒かれたくなかったら素直に教えてくださいませんか」

「……分かったわよ」

「ありがとうございます」


 寧々と男子が言い争っている時、清子も別な女子生徒と駆け引きをしていることに、菫以外気づいていない。


「どうやら、翼さんは中間テストで一番点数が悪かった白河さんの罰ゲームで付き合っているらしいです」


 清子が加藤から聞きだした情報を寧々と菫に伝える。


「まじでそんなことしてんの」

「おい、恵。なんでしゃべるんだよ」

「だって~、」


 男子生徒に怒られた恵は、口を尖らせる。

 一体清子はどんな手を使ったのだろう。


 今もニコニコ笑っている清子が悪魔にしか見えない。


 清子が言うには話はこうだ。


 六人は中間テストで最下位になった人に罰ゲームをすることを考えた。

 内容は好きでもない人に告り、七夕祭りでデートするということだった。


 それを他の五人は除き見て笑っているらしい。


 ちなみに翼が選ばれたのは一番断らなさそうだったからだ。


 それを聞いた寧々は怒りで頭が真っ白になる。


 たったそんなことのためだけに、今まで楽しみにしていた翼との七夕祭りを邪魔されたのだ。


 こんなの許せるわけがない。


「おーまーえーらー」

「落ち着いてください、寧々さん。ここで暴力沙汰は禁止です」

「離して清子。せめてこいつらを一発殴らないと気がすまないのよ」

「ダメです。それよりも早くこれを翼さんに教える方が先です。翼さんだって被害者なんですから」


 清子の言葉に少しだけ冷静さを取り戻す寧々。

 そうだ。翼だってこれの被害者なのだ。


 二日前の翼の様子からすると、翼は本気で優のことが好きでいる。


 でもそれが嘘だと分かったら。


 きっと、翼は耐え難い悲しみや襲われるだろう。


 そんな翼の姿は見たくない。


 でも真実を教えてあげないと、翼は哀れだ。


 早く、助けてあげないと。


 寧々の心に強い使命感がこみ上げてくる。


「清子、菫、翼の後を追うわよ」

「はい」

「うん」

「早く、翼に教えてあげるわよ。そして三人で翼のことを助けてあげるわよ」


 寧々は二人に命令すると、自分が先頭に立ちその後を清子と菫がついてくる。


 そしてなぜか三組の五人もついてくる。


 別についてこなくてもいいのだが、こいつらといた方が方向が分かるかもしれない。

 結局、途中で翼を見失った寧々は三組の人に居場所を聞きながら助けに向かうのであった。

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