第45話 ついに彼女ができた

「それでね桐谷。今日は大事な用があって呼び出したの」

「ゴクン」


 本題に入り始めたので、翼は緊張で生唾を飲み込む。


「いきなりこういうのが嫌いな人は嫌いかもしれないけど、あたし、桐谷のこと前から好きだったんだよね。でもなかなか同じクラスにはなれないし。もし良かったらあたしとお付き合いしてくださいませんか」


 高圧的な態度から一転、優は恥らう乙女のように頬を赤く染めて頭を下げ、翼に告白をしてきた。


 その瞬間、翼の体に電流が流れる。


 これはもう間違い。


 夢に見た女子からの告白だ。



 よっしゃ――――――――――――――――――――。



 翼は心の中で雄たけびをあげる。


 ついに夢にまで見た女子からの告白。


 もしかしてこれがモテ期か。


 嬉しさのあまり涙と叫ぶのを我慢した翼は真摯に返事をする。


「こちらこそお願いします」

「あ、ありがとう」


 それを聞いた優は目元に涙を浮かべながら、ワナワナと震えている。


 まさかこんな簡単に彼女ができるとは。


 これから俺のハーレムが始まってしまうのではないか。


 翼は内心ニヤニヤしながらも、表情に出さないように我慢する。


「それで土曜日の七夕祭りなんだけど、一緒に行ってくれないかな?」

「ん?」


 喜びもつかの間、この日は寧々たちとの大切な約束がある。


 だからこそ、翼の表情が固まってしまった。


 もし、許されるのなら彼女と一緒に行きたい。


 でも先に約束したのは寧々たちだ。


 寧々たちの泣き顔なん見たくない。


 もちろん、優の泣き顔をもだ。


 せっかく人生初の彼女ができたのだ。


 翼の心は揺れ動く。


「もしかして先約とかあった?」


 悩んでいることが分かったのだろう。

 優が心配そうな顔で翼の顔を覗き込んでくる。


「……大丈夫だ。それじゃー二人で七夕祭りに行こう」

「うん、当日楽しみに待っててね。それじゃー」


 告白をして勇気を使い果たしたのだろう。


 優は告白と七夕祭りの約束を取り付けると、一目散に帰ってしまった。


 いきなり彼女ができて、浮かれていたとしても寧々たちにはひどいことをしてしまったな。


 翼は寧々たちの約束よりも優の約束を優先させたことに罪悪感を抱く。


 でも寧々たちとは友達だ。


 自分が理由を説明し、真摯に謝れば許してくれるだろう。


 翼は楽観的に考え、明日の放課後、寧々たちに説明することを決めたのであった。

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