第四章 ついに彼女ができた

第39話 テスト終了

「そこまで」


 先生の号令とチャイムが鳴り終わるのと同時に、翼はシャープペンを机に置く。


「では、後ろの席の人は答案用紙を集めてきてくれ」


 先生の号令により後ろの席の人が立ち上がり、後ろから順に解答用紙を集めていく。


 今日は六月最終日。


 つまり、中間テスト三日目だ。


 後ろの席の人が解答用紙を集めている姿を見ながら、一番後ろの席でなくて良かったと暢気なことを考えていた。

 後ろの席の人が先生に解答用紙を渡し、自分の席に帰る。


「起立」


 日直の生徒が号令をかけ、翼はめんどうくさそうに立ち上がる。


「礼」


 一応形だけの礼をして、テストが終わる。

 その瞬間、クラスのいたるところから喜びの声が上がる。


 なんだって今日はテスト最終日の三時間目。

 つまり、今のが最後のテストだったのだ。


 みんなテストの呪縛から解放されて喜んでいるのだろう。


 もちろん、翼もだ。


 翼も勉強しないと余裕で赤点を取ってしまうのでこの二週間、真面目に勉強を頑張っていた。


 それは隣にいる伊織も例外ではなく、喜びのあまり机に脱力している。


「お疲れ伊織。テストはどうだった?」

「お疲れ翼ちゃん。どの教科もまぁーまぁーできたから赤点はないと思う」

「俺もまぁーまぁーできたから赤点はないと思うな」


 翼は一度席に座り、伊織と話し込む。


 翼だけではなく、伊織もこの二週間近くテスト勉強を頑張っていた。

 それは一緒に勉強していた翼だから分かることだ。

 この二週間、大好きな彼氏にも会わずに勉強していたのだ。

 きっと、今の伊織の欲求は溜まりに溜まっているだろう。


「やっと終わったよ翼ちゃん。これでやっと彼氏に会える」


 今日から彼氏に会えると楽しみにしている伊織はすでに顔がにやけている。

 それはあまり人には見せられないぐらい緩んでいた。


「伊織もこの二週間テスト勉強頑張ったんだから夜は休めよ」


 伊織は翼の大切な幼馴染だ。


 だから翼が伊織を心配するのは当たり前だ。


「ダメよ翼ちゃん。今日は彼氏とオールナイトなんだから。その前に寝かせるつもりなんてないし」


 伊織は悪戯な笑みを浮かべる。

 この際伊織の貞操感は置いとくが、伊織は平気で翼に下ネタを発言する。


「少しは彼氏の体にも気を使えよ」

「大丈夫大丈夫。私が彼氏に疲れなんか感じさせないぐらい気持ち良くさせるから」


 この後のことを想像すると、彼氏が少しだけ可哀想に思えてきた。

 でも好きな子となら、どんな疲れていても幸せなのだろう。


 彼女がいない翼には分からない感覚だが。


 ちなみに、伊織の全裸は見慣れているのでさほど興奮しない。


「それより、翼ちゃんはこの後どうするの。まっすぐ家に帰るの?ボッチのように」

「伊織、彼氏がいるだけで調子に乗るなよ。この後は寧々たち三人と簡単な打ち上げをする予定なんだからな」

「せっかくなら私も誘ってくれれば良かったのに」

「お前は今日彼氏とデートがあるから無理だろ」

「そうだよ。テヘペロ」


 テスト勉強しすぎて馬鹿になったのだろうか。それとも今日、彼氏と会うから浮かれているのだろうか。


 今日の伊織のテンションはおかしい。


 その後、担任の先生が来て簡単なホームルームが終わる。


「それじゃー翼ちゃん。また火曜日ね」

「あぁー」


 ホームルームが終わると、脱兎のごとく伊織は教室を出て行った。

 それほど彼氏に会いたいと思っているのだろう。


 今日は金曜日。

 なぜ月曜日ではなく火曜日かと言うと、月曜日はテスト明けの休みになっている。

 明日は土曜日なので、月曜日が振り休になる。


「翼、菫、お待たせ。それじゃー早速行く?」

「こっちも大丈夫よ」


 伊織と入れ違いに、翼の周りに寧々と菫がやって来た。


「俺も大丈夫だ。あと清子を迎えに行こう」


 翼も用意は終わっていたので、席から立ち清子と合流すべく一組の教室に向かう。


「それにしても翼って伊織と仲が良いよね。本当にただの幼馴染なの?」


 一組の教室に向かっている途中、寧々が何気なく聞いてきた。


「俺と伊織は正真正銘のただの幼馴染だ。なにもないよ」


 変な勘くぐられるのも嫌なので、翼は身の潔白を主張する。

 それに伊織はさっき彼氏に会うために帰って行ったし。


「それに伊織には他校に彼氏がいるしな。俺とはなんにもねーよ」

「翼ってその彼氏と会ったことあるの?」

「二回ぐらいな。男の俺が言うと変な誤解をされそうだけど結構イケメンで気配りが上手な彼氏だったな」


 翼は、伊織の彼氏と会った日のことを思い出し、寧々に説明する。


 伊織は幼馴染の翼の目から見ても可愛くて優しい。

 そんな女の子と釣り合うのが伊織の彼氏だ。

 はっきり言って、あの彼氏ほど伊織に合う彼氏はいないだろう。

 同級生ということもあり、道中で会えば挨拶するぐらいは仲が良い。


 その後、一組の教室ではまだホームルームが終わっていなかったので三分ぐらい教室の前で待つことになった。


 ホームルームが終わると、翼たちに気づいていた清子は慌てて鞄に教科書などを詰めると急いで教室から出てきた。


「すみません、お待たせしてしまって」

「別にそんなに待ってないから良いって。それにホームルームが遅くなったのは清子じゃなく担任の先生の話が長いからでしょ」


 清子が申し訳なさそうに、頭を下げると寧々が自然にフォローの言葉をかける。


「それじゃー打ち上げにでも行くか」


 四人そろったことを確認した翼が音頭を取る。


 そして、学校を出た四人は駅前のファミレスに向かったのであった。

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