第26話 プリクラ

「あの大きな箱のような機械はなんなんですか」

「あれはプリクラだよ。あの箱の中に入って写真を撮るの」


 プリクラコーナーにたどり着いた清子は興味津々な顔でプリクラの機械を見つめる。

 プリクラコーナーには翼と同い年ぐらいの女子高生が、キャッキャ言いながら楽しそうにプリクラを撮り合っている。


 それにしても女子の人口率が多いな~。


 翼は女子の多さに少し圧倒されていた。


 女子どころか男子の友達も少ない翼にはややハードルが高い場所だった。


「清子も撮ってみる?」

「ぜひ、撮りたいです」


 清子の一声に、今度は三人でプリクラを撮ることになった。

 三人してプリクラコーナーに入ると、一斉に注目を浴びる。

 寧々は派手で明るく今時のギャルっぽいし、清子はお金持ちのお嬢様みたいな気品に満ち溢れている。


 これで注目するなという方が無理な話だ。


 寧々はこういうのに慣れているのか堂々と歩いているのか、清子は初めての体験らしくソワソワしている。


「あの子たち、凄く可愛いんだけど」

「ホント~。きれ~」

「でもあの男子、冴えなくない」

「ちょっと地味よね」


 周りの女子生徒は、寧々や清子の容姿をベタ褒めし、翼は軽くディすられる。


 お前たちには関係ないだろ。


 翼は心の中で悪態を吐くが、口に出すと容赦ない攻撃を受けると知っているので、決して口に出して言わない。


 でもこの二人が褒められるのはまるで自分のことのように気分が良くなる。

 そして、空いているプリクラの機械を見つけると三人でその中に入る。


「結構中は狭いのですね」


 どうやら、清子が思っていたよりも狭かったらしい。


「結構くっついて撮るしね。狭くてもなにも問題はないわ」


 結構な数をのプリクラを撮って来たのだろう。


 寧々は堂々とした佇まいで、清子に説明をする。


 このプリクラは一回四百円と平均的な値段で、誰が多く払うかで少し揉めたが結局清子の頑固さには敵わず、清子が百円多く払うことになった。


 四百円を入れると機械を動き出し、アナウンスが流れる。


「ひゃ、ビックリしました」


 アナウンスで驚いた清子が可愛くて、二人してクスクス笑ってしまった。

 クスクス笑われた清子は少しご機嫌斜めになり、頬を膨らませて拗ねるもその表情すら可愛らしかった。


 寧々にやり方を教えてもらいながら清子が操作すると事件が起こる。


 それはフレームを選ぶ時のことだった。


「いろいろな枠があるのですね」

「そうね。最初はこういう無難なものが良いかもしれないわね」

「あっ、これ、可愛いです。これにします」

「あっ、ちょっと」


 寧々の停止もむなしく、清子が勝手にフレームを選んでしまった。

 寧々は苦笑いを浮かべるも、選んでしまったものはしょうがないという諦めの境地にいたった。


「寧々、清子はどんなフレームを選んだんだ」


 翼は恐る恐る寧々に聞いてみると、画面を指差して説明する。


「これよ。主にカップルが使うハートの形のフレームよ」


 それは甘ったるいピンク色をした、明らかにカップルが使うようなフレームだった。


 これには翼も苦笑いを浮かべる。


 これは少しだけ恥ずかしいかもしれない。


 その後は問題なく進み、ついに撮影が始める。


「私、初めてなのでどんなポーズをとれば良いのか分かりません」


 翼を真ん中にし、左側に立っている清子が悲鳴を上げる。


「俺もピースぐらいしか分からないぞ」


 普通の男子高生の翼もプリクラなんてほとんど撮ったことがないので、どんなポーズをとれば良いのか分からない。


「それじゃーあたしが二人に教えてあげる。二人ともあたしのマネをするんだよ」


 二人に頼られたことが嬉しかったのか、寧々は得意げに話をする。


「そうね。まずは人差し指を頬に当ててツンツンしてみて。そうそうそんな感じ」


 寧々が両手の人差し指を両頬に当て、ツンツンとしたポーズをとる。

 寧々のポーズを見ながら翼も清子も見よう見真似でやってみる。

 寧々の合格をいただき、写真が撮影される。


「結構短いんだな」

「そうよ。だからすぐにポーズを変えて撮影しないと遅れちゃうわよ。プリクラは戦いよ」

「プリクラは戦いですか。なんか深いです」


 清子が変なところに感動をしている。


 翼も久しぶりに撮ったが昔はこんなに早かったっけ。それとも覚えていないだけか。


 とりあえず次も撮影されるので、すぐにポーズを変える。


「あたしと清子は頭の上に手を立てて、ウサギさんみたいに。翼はその手を丸めて熊さんポーズね。まるで可愛いウサギを追い掛け回してるみたい」

「おいちょっと待て。それじゃー俺だけが悪者……」


 パシャ。


 翼が横を向いて抗議している瞬間を撮られてしまった。

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