第25話 翼 天然

 その後がシューティングゲームや、ゲームのボウリング、エアホッケ等をして遊んだ。


 ボウリングはやはり、寧々が一位で清子が最下位だった。


 でも清子はみんなで遊べたことが楽しかったのか、最下位でも笑っていた。


 エアホッケでは、ハンデということで翼対男の娘二人と戦った。


 結果から言えば翼の惜敗だった。


 やはり寧々が強く、いろいろと清子に教えながらポイントを獲得していった。


 清子も終盤になる頃には、結構上達し翼を苦しめた。


 でも翼もこのエアホッケは結構好きだったので、伊織と怜奈と来る時は毎回遊んでいた。


 そのおかげで一対二にも慣れていたので、接戦に持ち込めた。

 それでも負けは負けなので二人にジュースを奢ってあげた。


 クレーンゲームでは一円も出していなかったので、そのお礼と受け取ってもらえれば良いと思った。


「ゲームセンターってとても楽しいところなんですね」


 最初来た時、ゲームセンターの大音量で顔をしかめていた清子が、今では普通にゲームセンターを満喫している。


 ゲームセンターの大音量にも慣れ、ゲームの楽しみ方も分かってきたのだろう。


「そうよ。ゲーセンって楽しいでしょ」


 寧々はまるで自分が褒められたかのように嬉しく笑う。

 寧々もゲームセンターが好きなリア充だからだろう。


 やっぱり自分が好きなものを友達も好きって言ってくれるのは嬉しい。


「それに寧々さんって本当になんでもお上手なんですね。私感激しました」


 清子はキラキラと目を輝かせて寧々の両手を優しく包み込む。

 今の清子はまるで神を崇めている信者のように輝いていた。


「ちょっと買いかぶりすぎだってー」


 寧々は謙遜するも清子に褒められて、満更でもない顔をしている。


 とにかく二人が仲良くなれて良かったと翼は思う。


 最初は主に寧々が清子に敵愾心むき出しで心配したが、今ではまるで友達のように話せている。


 それに二人とも男の娘だから親近感もわくのだろう。

 そのような効果もあり、二人は今まるで友達のようにはしゃぎ合っている。


「翼さんもありがとうございます。お金の使い方を教えてくださって」


 清子は一旦、寧々の手を離すと今度は翼の両手を優しく包み込む。


「そんな大層なことはしてないよ」


 翼は苦笑いを浮かべる。


 ただ、小銭の入れ方を教えたり、両替の仕方を教えたりと当たり前のことしか教えていない。


 だからそこまで清子に感謝されることはしていないはずだ。


 その証拠に顔を真っ赤にしながら寧々が笑いをこらえている。今にも吹き出しそうだ。


「そんなことはありません。もしなにも知らないまま友達と一緒にゲームセンターに来たいたら、カードしか持ってない私は遊ぶことすらできませんでした。来てみて正解です」


 尚も顔を近づけてお礼を言ってくる清子。

 翼はあまりの近さに少しだけ後ずさる。


 少しでも前に動けば、唇がくっつきそうなほど近い。

 すでに清子の甘い吐息が翼の顔にかかっている。

 どうして男の娘も女の子と同じように良い匂いがするのだろうか。


「ちょっ、清子顔近すぎ。離れなさいよ」


 笑いをこらえていた寧々は一変、急に焦った声を出しながら二人の間に体を入れて二人を引き離す。


「すみません」


 寧々に注意された清子は、シュンと肩をすぼめる。


「ありがとう、助かった」


 翼は引き離された寧々にお礼を言う。

 あのままだったら、下手すれば事故でキスをしていたかもしれない。


 ラノベの展開ならありえることだった。


 そして傷つくのは清子の方だ。


「そうですよね。男の娘の私があんなに近づいたら嫌ですよね」


 今まで聞いたことがないぐらい、暗い清子の声。


 きっと清子は近づきすぎて翼に嫌われたと思ったのだろう。


 『助かった』と寧々に言ったのは間違いだったのかもしれない。


 清子の言葉を聞いた寧々は『やっちゃった』というような顔をしていた。


「……なにしてるんだろ。清子に嫉妬しないって決めたのに」


 寧々は自分を責めるが、その声は二人には届かなかった。


「違う違う。別に男の娘だから嫌いじゃなくてあのままだったらもしどちらかがバランスを崩した時、……唇が当たっちゃうだろ。だから助かったって言ったんだ。別に二人が男の娘だから嫌いになったわけじゃないからな」


 翼が必死に清子に弁明すると、清子だけではなく寧々までも安堵の表情を浮かべる。

 清子は分かるがなぜ寧々まで安堵しているのか翼には分からなかった。


「別に私が男の娘だから嫌いであんなこと言ったわけではないんですよね」


 再度確認するかのように、清子は聞き返してくる。


「そうだよ。嫌いどころか俺は二人のことが好きだよ」

「「えっ……」」


 翼は友達して二人のことが好きになっていた。

 付き合いはたった一ヶ月にも満たないが、二人とも個性が強くいつの間にか好感を抱くようになっていた。


 翼に好きと言われた二人はなぜか、頬を赤くしながら固まっている。


 さすがに二人とも照れ臭かったのだろう。


 友達でもなかなか直接『好き』なんて言わないしな。


「……ちょーやば~い。顔が真っ赤なんだけど」

「……なぜでしょう。鼓動が急に速くなりました」


 二人はブツブツなにか言っているが、この大音量の室内では聞き取ることができなかった。


「もう翼ったらいきなりくさいこと言わないでよ」

「でも翼さんにそう言ってもらえて私たちとても嬉しかったです」


 寧々は照れ臭さそうにツンツンし、清子は上品な笑みを浮かべる。

 とりあえず、変な空気は変えられたので翼的には良かった。

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