第13話 止めて、そんな目で見ないで

「別にクラスメイトなんだから良いでしょ」


 寧々はなぜ翼がこんなに動揺しているのか分からず、ぶっきら棒に返す。

 どうやら寧々はカースト的なものを気にしないらしい。


 寧々が気にしないなら翼に断る理由はない。

 翼のラインに寧々が友達追加された。


 何気にクラスメイトとしては初めてのラインを交換したのは寧々だった。

 翼には伊織以外女友達どころか男友達もいない。

 ラノベ的には主人公気質なのだが、実際女友達どころか男友達がいないのは辛い。

 みんな仲良く教室で話している空間で自分一人、誰とも話さず暇を持て余すのは部屋に一人でいるよりも辛い。


 ちなみにこのクラスのグループラインは伊織から招待されている。


「って桐谷もグループラインに入ってるんだからそこから個人に友達追加すれば良かったのよ。そうすれば連絡だって取り合えたのに」


 寧々は今気づいたような感じの悲鳴を上げる。

 寧々に言われて確かにそうだったと翼は思った。


 なにしろラインなんて基本、伊織と家族としかしない翼なのだ。


 そういういまどきのハイカラな機能なんて知る由もなかった。


 って寧々も忘れていたくせに。


 バーカバーカ。


 怖くて口に出して言えないけど。


「悪いな斉藤。基本俺、伊織と家族としかラインしないから分からなかったわ」

「「……」」


 何気なくボソッと言った翼の言葉。その瞬間、二人から生暖かい視線が向けられる。


「……ごめん桐谷。まさかそこまで友達がいないなんて思わなかった」


 ガチトーンで謝ってくる寧々。


「止めて、その神妙な顔。マジで傷つくから」


 冗談や茶化しなら傷つかないがガチで哀れまれると、本当に傷ついてしまう。


「大丈夫よ翼ちゃん。今日斉藤さんと友達になれたんだから今翼ちゃんには友達が二人もいるんだよ」


 きっと伊織は翼を慰めてくれようとしたのだろう。

 でも具体的な数字を言われてあまりの少なさに逆に傷つく翼。


 まさかこんなにも友達が少ないなんて。


 もしかして自分の青春はこの時点で間違っているのかもしれない。


 でももう五月だ。


 新しいクラスになってからもう一ヶ月以上が経っているため、すでに新しいコミュニティができている。


 そのできたコミュニティに入るのは、最初から友達になるよりも遥かに難しい。


「友達になってくれるなら『寧々』って呼んでほしいな。『斉藤』より『寧々』の方が好きだし」


 伊織が友達宣言すると、すぐに寧々が馴れ馴れしく言ってきた。


 なんなのこのリア充のコミュニケーション能力は。

 だからこそリア充はすぐに友達ができるのだろう。

 リア充のコミュ力ハンパない。


「分かった。……寧々」

「うん、よろしい。よろしくね翼、伊織」

「よろしくね寧々ちゃん」


 今まで妹と幼馴染以外の人の名前を呼んだことない翼は緊張しながら、噛まないように発する。


 一方寧々は伊織まで友達認定し、名前で呼ぶ。


 伊織も満更ではない顔をしており、嬉しそうな顔で寧々の名前を呼ぶ。

 伊織もどちらかというとリア充の方の人間だ。

 こういう馴れ馴れしさも慣れているのだろう。


 だが、翼は違う。


 まさか人の下の名前を呼ぶのがこんなにも勇気がいって恥ずかしいなんて思わなかった。


 伊織や怜奈はなにも緊張しないで言えるのに。


「それじゃー翼。今週の水曜日とかはどう?あたしそこなら空いてるから」

「いいぜ。俺はいつでも空いてるからよ」

「「……」」


 別に自虐をしているわけではないが、思わず毎日暇アピールをしてしまった。

 つまり、友達がいないから暇と言ったようなものだ。

 それを聞いた二人が生暖かくも哀れむような視線を向ける。


 だから、その目止めて。


 そんな目で見られるといたたまれなくなるから。


「大丈夫よ翼。暇なら話し相手ぐらいにはなってあげるから」


 寧々が哀れむような声で翼の肩を掴む。

 このリア充特有の距離感の近さに戸惑いながら、少しだけドキドキしてしまった。

 でも、生暖かい視線で哀れむのだけは止めてほしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます