第10話 高校二年生は恋の季節?

「そう言えば翼ちゃん。今日彼氏とデートしてた時斉藤さんと一緒にいたよね」


 お風呂から上がってくると、いきなり伊織から話しかけられた。

 まさか寧々と一緒にいるところを見られていたなんて。


 別に寧々と一緒にいるところを見られてもどうでも良いのだが、だったら助けに来てほしかった。


 ちなみに二人とも湯冷めしたのか、もうパジャマを着ている。


伊織はピンクと白のドット柄のパジャマを着ていて、怜奈はグレーのスウェットを着ている。

 もちろん、翼も黒のスウェットを履いている。


「珍しいよね。翼ちゃんと斉藤さんが一緒に放課後に会ってるなんて」


 翼がぶっきらぼうに答えると、伊織はまるで珍獣にあったかのように驚いている。

 伊織は二人の間になにがあったのか興味津々の顔で続きを促している。


「斉藤先輩ってあのリア充で男の娘の斉藤先輩?」


 リア充の寧々はどうやら一年生でも有名らしい。

 あんなにギャルギャルしくて男の娘で可愛かったら有名になるだろう。


「そうだ。あの斉藤だ」


 とりあえず翼は怜奈に肯定しておく。


「そんな斉藤さんと一体翼ちゃんはなにをしてたの。まさか密会とか。実は二人は誰にも言えない関係だったりして~、キャー」


 伊織が勝手に二人の妄想をして悶えている。


 両手を頬に悶えている姿はいまどきの女子高生のようだった。伊織は正真正銘女子高生だけれどど。


「そんなわけあるか。斉藤は男の娘だぞ。俺は男の娘じゃなく女の子の恋人がほしいんだ」


 この国では同性婚も認められているが、翼は女子と恋愛がしたい。


 もちろん、同性婚を否定したりするつもりもない。


 それも一つの価値観だ。


「まっ、それも一つの価値観だから良いと思うけど。翼ちゃんに彼女なんてできるの~?高校一年生の時から言ってるけど全然彼女の影がないんだけど」


 自分に彼氏がいるからって彼女がいない翼をからかう伊織。

 翼も悔しくてなにか言い返したかったのだが、その通りだったのでなにも言い返すことができなかった。


 くそー絶対に彼女を作ってやるー。


 翼は心の中で悪態を吐き、再び彼女を作る決意をする。


「なんの問題もない。なぜなら高校二年生はラノベで言う恋の季節だからな」

「「……」」


 翼がなんとかポジティブになると、二人して冷たい視線を浴びせられる。


 なぜだ。


 翼はあまりにも冷たい視線を浴びせられ、心が凍ってしまう。


「翼ちゃん。もう少し現実を見よっ」

「もしお兄ちゃんの言うことが正しかったらこの世界の高校二年生はみんなリア充よ」


 伊織にはため息を吐かれ、怜奈には哀れみの視線を向けられる。

 幼馴染と妹はとても現実主義者で翼には冷たかったのである。




 次の日。


 いつも通り、伊織と怜奈と一緒に登校する。

 その後、適当にクラスの人と挨拶をかわし、席に着く。

 いつも通りの朝の光景。


 隣では伊織が教科書を机の中にしまっている。


「おはよう桐谷」

「……おはよう斉藤」


 椅子に座り翼も教科書を机の中に入れていると意外な人物から声をかけられた。


 そのせいで、挨拶が一拍遅れる。


「どうしたの桐谷。まるで朝から幽霊でも見たような顔をして」

「……なんで斉藤が俺に挨拶してるんだ」


 翼に挨拶をしてきたのはこのクラスのカーストトップ、斉藤寧々だったのだ。

 寧々とクラスメイトになってから二週間以上経つが、今まで挨拶をされた覚えはない。


 なぜ今日になって急に挨拶をしてきたのだろうか。


「変なことを聞くのね桐谷って。クラスメイトなら普通挨拶ぐらいするでしょ」


 なにを当たり前なことを聞いているのと寧々の顔は訴えている。


 いやいや。


 翼は心の中で首を横に振る。


 クラスメイトになって今まで挨拶すらしない関係だったのに、急に挨拶をされたら誰だって困惑するだろう。


「おはよう斉藤さん。昨日は二人でなにしてたの」

「おはよう峰岸。別にあたしは桐谷に助けてもらったお礼をしていただけよ」


 話すタイミングをうかがっていた伊織が寧々に話しかける。

 別に嫌らしいこともしていないので、あの場面を誰かに見られても寧々は飄々と事実を話す。


 確かに翼と寧々の組み合わせは意外だが、他の人間が見れば同じ学校の人同士仲良くしているようにしか見えない。

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