第一章 俺はラノベ主人公になりたい

第2話 現実と二次元の妹の違い

 もしこの世の物理法則が変わっていなかったら今日が終われば明日が来る。

 つまり夜が終われば朝が来る。


 朝の七時。

 桐谷翼はけたたましい目覚ましの音で目を覚ます。


 桐谷翼は私立黒川高校に通う高校二年生の男子生徒だ。

 身長は百七十後半と平均よりも高い。

 髪は黒髪の短髪でいつもワックスを使い、髪を立てている。

 この方がリア充な高校生に見えるからである。

 長身痩躯で、他の生徒と一緒にいるとモブと見分けられないぐらい影は薄い。

 そんな翼だがひそかに抱いている野望がある。


 それはラノベのハーレム主人公である。


 翼はリア充を目指しながらもオタクであるのだ。


 もう一回言うが翼は高校二年生である。


 つまり、ラノベ的にはちょうど良い年齢であり。この年になればきっと異世界に転生したらり、どこかの天使や悪魔の抗争に巻き込まれたり、いきなり日常バトルに巻き込まれたり、いきなり女の子にモテ始める年齢である。


 しかし翼が高校二年生になって二週間が経つもなんのフラグも立たない。


 この頃から少しおかしいと翼も思い始めた。


 中学生の頃は、高校生ってもっと刺激溢れる人生だと思っていたのだが現実は無常である。


 毎日同じ道を歩き高校に行き、つまらない授業を聞き、そして家に帰ってラノベや漫画を読む。


 全然翼が考えていた高校生生活と違う。

 高校生になればもっと青春に溢れた生活を送れると思っていたのに。

 翼は起きたばかりの重い瞼を開けながらカーテンを開け、日の光を浴びる。

 その後、睡魔と闘いながら制服に着替える。


 黒川高校の制服は紺のブレザーにワイシャツ、赤のネクタイに紺のスラックスとなんとも地味な制服である。

 一方女子は男子と同じブレザーで、ブラウスに赤のリボン、そして紺のスカートである。


 翼は制服に着替えてリビングに行くと、もう朝ごはんができていた。


「おはようお兄ちゃん。朝ごはんできてるから食べちゃって」

「おはよう怜奈」


 リビングで朝ごはんを作っていたのは翼の実妹の桐谷怜奈である。

 年は翼の一つ下の高校一年生。黒川高校に通っている。

 怜奈はもうすでに制服に着替えてその上にエプロンをつけ、料理を作っている。

 朝ギリギリまで寝ている兄とは大違いである。


 身長は百五十半ば。

 兄と違い髪は茶髪で、後ろの方で二つに結んでいる。

 いわゆるツインテールという髪型だ。

 目はパッチリと大きく、頬も血色が良く唇は少し薄いがそれが可愛らしい。

 手足や腰、胸には女性らしい皮下脂肪がついており、身内の色眼鏡を外しても可愛い。

 胸は推定Bカップ。

 本人は胸が小さいことを気にしているらしいが、翼はそんなに気にしなくても良いと思っている。


 だって胸が大きかろうと小さかろうと怜奈が可愛いことには変わりはないのだから。

 翼は少しだけシスコンである。


 そんな愛する妹が作った料理を食べようと、イスに座る。

 テーブルの上にはご飯と納豆、卵焼き、味噌汁、麦茶と忙しい朝にも関わらず全部怜奈が用意してくれる。


 翼もゴミ出しや皿洗いとか手伝っているが、怜奈ほどではない。


 父は単身赴任をしており、母も遅くまで研究室で研究をしているため帰ってくる方が珍しい。


 だから家事は基本、兄妹でやらなくてはならない。


 それが苦だとは今は思わない。

 もう慣れてしまったからだ。


 まず湯気が立っていて、味噌の香ばしい匂いが食欲をそそる味噌汁からいただく。


「うん、うまい怜奈」

「ありがとう」

 怜奈の作った味噌汁は濃すぎず薄ぎずちょうど良い味だった。さすが妹である。

 翼が素直に感想を漏らすと、機械的に言葉を返す怜奈。


 別に仲が悪いわけでも嫌われているわけでもない。

 その証拠に、


「怜奈ってお兄ちゃんのこと好き?」

「うん、好き」

「俺も好き」

「ありがとう」


 ちゃんと怜奈は好きと言ってくれる。


 もちろん翼も妹の怜奈は好きなので、お返しに好きと言い返す。

 怜奈も朝ごはんの用意が終わったようで、翼の対面に座りご飯を食べ始める。

 翼も怜奈に好きと言われて嬉しくないわけではないが、もう少し好きでいてほしいなと思う。


 二次元の妹はもっと過剰に好きと言ったり、スキンシップも激しいのに。


 だが、怜奈は翼のことを兄としては好きだがそれ以上の好きではない。

 まぁー当たり前なのだが二次元の妹のように重度のブラコンではない。

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