第3-1話

 あきらの運転する車は、首都高三ツ沢線から横羽線へと入ったところだった。


 横浜の街並みが窓外そうがいを通り過ぎていく。


「あれ? ベイブリッジ通らないの?」


 ランドマークタワーの特徴的な形がすぐ近くに見えたので、一姫はあきらにいた。


「うん? この後通るんじゃないか?」


「すみません。近道をしたので今回は通りません」


 みつるが申し訳なさそうに答えた。


「あっ、ううん。観光じゃないわけだし。別にその見たいとかじゃないから」


 一姫は慌てて取りつくろう。


「素直じゃないよなぁ」


 バックミラー越しに、あきれているあきらの顔が見えた。


 でも呆れた顔をされるのは、運転しているのに知らなかったあきらの方だと思う。


「とりあえず新宿は私のゴジラ説が最有力ということにして、次は渋谷ね」


 一姫はあきらを無視して話を進める。


「ゴジラ説ってお前……」


「そこのみなとみらいで下りてください」


 みつるがあきらに指示を出した。


「わ、分かった」


 あきらは慌ててハンドルを切る。


「首が痛い……」


 これで五度目だろうか。慣性かんせいで乱れた髪を直しながら一姫はつぶやいた。


「見た目は事故っぽいけど、関係者はありえないって言っていたよなぁ」


「そうですね」


「でもみつるは事故の可能性が高いと思っているのだろ?」


「ゴジラ説を聞いて、少し変わりました」


「えっ?」


 あきらが驚きの声を上げた。


「えへへ」


 一姫は喜びの声を上げる。


「莫耶限定で考えた場合、直接的な被害だけではなく、現在グループ全体に甚大じんだいな影響が出ています。あっ、そこ左です」


「あっ、ああ……、セキュリティセンターが吹っ飛んだからなぁ」


「そのり方は別として、莫耶をターゲットとするなら、かなめであるセキュリティセンターを最初に狙うというのは理にかなっていると思います。そこの駐車場へ」


「おっ、おお……」


 車はみなとみらい大通りを進み、さくら通りで左折すると、ランドマーク地下駐車場へと入った。

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