第1-4話

「不安……、なのかもな」


 唐突に修が呟いた。


「警備員の人達が?」


 自分で決めて引き受けた仕事だけれど、彩自身不安でたまらなかった。


「私達ってそんなに頼りに思われているのかな」


 それと悟られないように、わざとおどけてみせる。


「いや、みんながだよ」


 それだけ言うと、修はほんの少しだけ彩に微笑み、歩調を速めた。


 不意をいた修の笑顔に、彩は息を止めて立ち止まった。


 一瞬自分の目を疑う。


 いったい何時以来だろう。


 保護したくなるような稀少なその瞬間を忘れないように、頭の中で反芻はんすうする。


 真剣にそんなことを考えながら、彩は先を行く修の背中を急いで追いかけた。

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