第1-3話

「ああ、なるほど。結果的にははずれたことになるから、的中率が低いわけか」


 みつるの言う30という数値が、彼女の全てを示している訳ではないことを理解した。


「ええ、少数ですが彼女を信じなかった人達、防ぎようがなかった人達への的中率、つまり死亡の確率は100%です」


「凄いな」


 100%的中する死の予告。その言葉の持つ意味に薄ら寒いものを感じて、あきらは身を震わせた。


「見えてきましたよ」


 みつるにうながされて先を見ると、細い階段の上に小さな鳥居が建っているのが見えた。


 横に並んで歩くには幅が狭いので、みつるを先に一列になって階段を上る。


 鳥居をくぐると石畳の道が続き、立ち並ぶ石灯籠の先に社が見えた。


 道の両脇に立つ色褪いろあせた木々は徐々じょじょに濃度を増し、空をおおっている裸の枝の隙間すきまからは、弱く暖かな日が射している。


 北からの冷たい風がこずえを揺らし、潮騒しおさいのような心地好い音が一帯に響く。


 林の奥から聞こえてくるさぎの鳴き声に耳を傾けながら、黙々と歩を進める。


 社に近づくにつれて、辺りを包む空気がりんとしたものに変化していく。


「神前に供えられているのは、どうやらお豆腐のようですね」


 みつるは、水分が抜け角が取れた豆腐を面白そうに見ている。


「こっちには、ひもが通った竹筒が何本もあるぞ」


 あきらは竹筒を持ち上げた。どういう意味があるのだろうか。昔のおもちゃのようにも見える。


「耳神神社の古くからの風習なのですよ」


 二人が話をしていると、社の後ろから狩衣かりぎぬ差袴さしこ烏帽子えぼしといった装束しょうぞくを着けた初老の男性が現れた。


 男性が近づくにつれて辺りの空気の色が濃くなり、太陽光の強さが増したように感じる。


「宮司の方でしょうか?」


 みつるが尋ねた。


「ええ、四十年程、耳神神社の宮司をしていますよ」


 男性は穏やかな声で答えた。


「面白い風習だな」


 手に持っていた竹筒を元の場所に戻しながら、あきらは呟いた。


「耳が通るように、という願いが込められているのですよ」


 独り言が聞こえたのか、宮司が笑顔で答えた。


「やっ、そのような意味があったのですか」


 あきらはぎこちない笑みを返した。


「随分早い時間に参られたようですが、どちらから来られたのかな」


 若い男が二人、早朝にお参りに来たのが珍しいのか、あごに手を当て興味深そうに二人を見ている。


「東京の莫耶エネルギー研究所から来ました」


 みつるが答えた。

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