第8-2話

 突然発せられたその光は、薄闇に慣れていた目には強過ぎた。


 一瞬目がくらみ、次の瞬間にはすでに蓋は開いていた。


五十鈴いすず……」


 紫色の麻布の上に置かれた五十鈴が、淡く青白い光りを放っているように見える。


 長い間、秘して封印してあった天の川の神器を目の当たりにして、一姫は驚きと共に何故自分にたくされたのか理解できないという顔をしていた。


「天の川は市杵島姫命を祭神とし、白鳳年間建立以来、日本国を霊的に守護してきた。その永い歴史の中で幾度となく訪れた危機に際し、日本守護の御役目を天の川も少なからず果たしてきた」


 天の川の歴史について柿久は語る。


 一姫はうつむき、黙って聞いている。


「一姫、お前は天の川の巫女として、神器五十鈴と共に東京に行きなさい」


「えっ?」


 一姫は驚きの声を上げた。


「厳島、竹生島は既に護国の祈祷きとうに入った。一姫、私はこれから三日間の祈祷に入る」


「はい……」


 弁辯天三社全てが秘祭を行う程事態が切迫していることに、一姫も気が付いたようだった。


「今がそのときなのですか?」震える声で訊く。


「莫耶エネルギー研究所は知っているな?」質問には答えず話しを続けた。


「はい」


 一姫は柿久と共に何度か被験者として、研究所を訪れたことがあった。


「研究所の人達と行動を共にして、手助けをしなさい。一姫の巫女としての力がきっと役に立つ」


かしこまりました」


 三つ指を畳につき、一姫は頭を下げた。


 一姫がほんの一瞬微笑んだことに、柿久は気が付いていた。


 兄のようにしたっている、出利葉いずりは白館しろだてに会えるのが嬉しいのだろう。


 このような時に不謹慎ふきんしんとは思うが、その素直さに柿久も表情がゆるむ。

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