第5-3話

「どうぞ、続けて下さい」


 指を止めて、みつるは吉川にうながした。


「ちっ、地下鉄表参道線はホーム部の橋脚きょうきゃくが破損したため、不通になっています。東王池ノ上線は少し離れているため無事でしたが、KR連絡口は封鎖中です。地下鉄九段下線、東京林間都市線も、運行に支障ししょうはありませんが、現在八番出入り口を封鎖中です」


 本人に気付かれたのが恥ずかしかったのか、吉川はあわてた様子で説明の続きを始めた。


 思わず吹き出しそうになるのを、あきらは必死にこらえる。それでも身体が震えるのをおさえきれない。


 みつるがとがめるような表情でこちらを見ていることに気付き、あきらは咳払せきばらいをして座り直した。


「東京横浜線は、都心線との相互直通運転が始まり、新しい渋谷駅ホームに切り換わっていましたから、現在問題なく運行しています」


 吉川はそこまで説明すると言葉を切り、様子をうかがうようにみつるとあきらの顔を見ている。


 みつるを見ると、ネットに接続して情報を引き出しているようだったので、自分が質問することにした。


「安全装置が作動しなかったという報告を聞いていますが、その点について説明して貰えますか?」


「こんなことは、こんなことは絶対にありえないことなんです」


 吉川は表情をくもらせ、語気を強めた。


「はぁ……」


 吉川の見幕けんまくに意表をつかれ、どのように返答しようか迷っていると、横で作業を続けながらみつるが尋ねた。


「詳しく、お聞かせ願えませんか?」


 みつるの冷静な声に、自分が興奮していると気が付いたのか、吉川は落着きを取り戻すように大きく息を吐いた。


「機械に詳しい者がおりますので、お待ち下さい」


 吉川は立ち上がり、部屋の出入口へと向かう。


「申し訳ありませんが、運転士の方達にもお訊きしたいことがありますので、よろしければご一緒にお呼び頂けませんか?」


 みつるが吉川を呼び止めて頼んだ。


「分かりました」


 吉川は振り返るとうなずき、扉を開けて部屋を出て行った。

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