第5-2話

「お待たせしました。駅長の吉川です」


 吉川は挨拶しながら、あきらとみつるに名刺を差し出した。


「莫耶の白館です」


「出利葉です」


 二人は立ち上がり、名刺を受け取る。


「どうぞ、お座り下さい」


 吉川にうながされ、ソファーに再び腰を下ろした。


「この度は大変な事故を……」


 謝罪を始めた吉川に、あきらは心の中で舌打ちした。


 今回の仕事を頼まれたときから予想はしていたが、気持ちの良いものではない。


 さっさと用件を済ませて退散したいが、大人としてそれはきっと許されないことなのだろう。耐えることも含めて仕事なのだ。


 少しうつむき、聞いているふりをする。


 対応はみつるに任せることにした。


 延々と謝罪が続く。


 焦点をずらすのと同じ要領ようりょうで、拾う音を選択する。


 言葉が意味を失い、雑音に近くなる。


 みつるが一言二言なにか話した後、急に周囲が静かになったので、あきらは意識を引き戻した。


 何時の間に立ったのだろう、二人がこちらを見下ろしていることに気が付き、あわてて立ち上がる。


 髪をきながら頭を下げた。みつるの視線が少し痛い。


 微妙な空気の中、三人ともソファーに座る。


 みつるはおもむろにベルトに取り付けたウェアラブルパソコンの電源を入れると、ジャケットの胸ポケットから取り出した箱状の器機を接続した。


 すぐに接続した箱から緑色の光が投射され、テーブルの上にキーボードが形成される。


 さらに内ポケットからプラスチックのケースを取り出すと、メガネに似たヘッドマウントディスプレイを装着した。


 あきら側から見ると文字が反転しているが、レンズに起動情報が上から下へと次々と流れているのが判る。


「早速ですが、事故の被害と現在の状況を教えて頂けますか?」


 準備が整うと、みつるはそう切り出した。


「現在、環状線、平行している京浜縦貫線も不通で、KR渋谷駅は機能していません。車両の撤去作業を行っていますが、さらに建物が崩壊する危険があるため、作業は進んでいません」


 相変わらず凄い。


 説明を聞きながら、パソコンに素早く打ち込んでいるみつるの様子に感心していると、吉川の説明する声が急に止んだ。


 どうやら吉川も、みつるの指の動きに驚いているようだ。


 あきらが苦笑していると、説明が途切れた事にみつるも気付いたようだった。

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