プロ野球あるある 最下位のチームは最後に頑張りがち

翌日の火曜日。


ペナントレースも残り18試合となり、いよいよ佳境。ビクトリーズは最近6試合が1勝5敗と4位5位のチーム相手に低調な戦いぶりで早くも今シーズン89敗を記録してしまっている。



シーズン100敗達成まであと11敗。残り18試合。非常にヤバい。あと8勝。引き分けでもいいがなんとかしないと球団創設初年度とはいえ、不名誉な記録が生まれてしまう。


もう最下位は確定していますけど、なんとかそれだけは阻止しなければと、より一層気合いを入れ直して試合に臨むわけだが、今日からは首位の東京スカイスターズとのビジター3連戦。


相手は2位北海道に1ゲーム差に詰められており、リーグ連覇に向けて、ある意味うち以上に負けられない状況になっている。


2勝1敗が最低の最低限。うちの翌カードが2位北海道なので最下位のうち相手に取りこぼしは許されない。




そんな戦いを目前に控える中、俺はもちゃ男のお腹ぷよぷよコンビは真剣な表情で前哨戦に挑んでいた。



「おばちゃん。カレーおかわり!」


「オレモ!」


「あんたらはよく食べるねえ。これから試合なんだよ、大丈夫かい?」



水道橋ドームのおばちゃんに心配されるくらいのレベルだ。




後には引けない戦いなんだ。四の五のは言っていられない。







「さあ、こちら水道橋ドームです。9月12日火曜日。定刻通り、午後6時に試合が始まっております。試合は3回ウラを終えまして0ー5。北関東ビクトリーズが5点リードで試合は4回表に入るところであります。


それでは解説の宮本さんと共にこの試合のハイライトをご覧頂こうと思います」



「はい、よろしくお願いします」




「試合はいきなり動きます。スカイスターズの先発は既にここまでチームトップの13勝を挙げているドンコラス。その立ち上がり、北関東の1番バッター、柴崎への初球でした。いきなりアウトコースのボールをレフトへ。難しいコースでしたが、柴崎が見事なバッティング。


ワンバウンドでライン際フェンスに達する当たりで、ドンコラスはいきなりプレーボールツーベースを浴びてしまいます。


そして続く2番の新井も初球攻撃。アウトコースのツーシーム。打ち取った当たりですが、これがライト線へのポテンヒット。2塁から柴崎が返りましてビクトリーズが1番2番の連打。僅か2球でドンコラスから先制点を挙げます」



「柴崎君も新井君も共に打ったのは、外角のツーシームでした。ドンコラスはこの球とスライダーのコンビネーションが持ち味ですから、チームとしての狙いがあったのかもしれませんね」






「そして1アウト2塁となりまして、4番の赤月!! 高めのボールを捉えるとライトへ大きな当たり!非常に大きな打球になりました。



……打球はライトポールを直撃するホームラン! ピンクに染まったレフトスタンドが盛り上がる一撃は赤月の12号2ランホームラン。ビクトリーズが3ー0とリードを広げます。


さらに2回には8番守谷にタイムリー、さらに1番柴崎にもライト前へタイムリーが飛び出しましてビクトリーズが序盤に早くも5点をリードする展開となっております。



解説席には、スカイスターズで通算110勝の宮本さんにお越し頂いております。宮本さん、改めましてよろしくお願いします」



「はい、よろしくお願いします」



「ビクトリーズの打線が繋がりましてドンコラスは2回で5失点となったわけです……ドンコラスはビクトリーズから3勝を挙げていましたからいきなりの大量失点にちょっとびっくりなんですが……」





今日はなんだか非常にいい流れだ。相手先発は勝ち頭の外国人ピッチャーだが、柴ちゃんと俺の2人であっさり得点出来たのが全て。


相手ピッチャーの出鼻を挫いた。


打撃コーチが………カウントを取りにくるアウトコースのツーシームを狙っていけという助言が珍しく当たった格好だ。



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