ようやく9月になりました。
夏い暑が終わりまして、シーズンが始まって早くも丸5ヶ月が経過しまして、9月になってしまいました。
残すところ今シーズンもあと24試合。
気づけば120試合も消化したんですね。いやいや、本当に早いもので………。自分が出場していたのは、そのうちの7割くらいだと思いますから、もうそんな試合数を消化したのか………。という印象。
120試合を消化したビクトリーズの成績は……………………33勝84敗3引き分け。
借金51! 勝率.282! 5位横浜とのゲーム差17!
やばい。やばい成績だが、逆にうちのチームはなんだかんだで33勝もしていたんだと、なんだかそんな風に思ってしまった。
10数年前に、東北レッドイーグルスが新規参入した初年度は、今より少し試合数が少なかったけど、ギリギリ100敗しなかったくらいだったからね。
多分勝率もうちと同じくらい。
もう最下位脱出というもの非現実的な話なので、残り24試合でなんとか8勝以上して、シーズン100敗だけは防ぐ。
それがチームの当面の目標となるであろう。
勝率.282のチームが残り24試合で8勝。
微妙なラインだなー。
早い段階でまた5連敗6連敗なんてのをかましてしまうと本当に3桁負けというのが現実見を帯びてきてしまう。
と、そんな苦しむチーム成績の中で一際輝いているのは、何を隠そう俺の打率である。
286打数116安打。打率.405である。
自分が1番驚いている。
デビュー戦から振り返ってみると、初の1軍昇格が5月の頭で、はじめは何故だかバント要員だったのだが。
1度2軍落ちして再度昇格した、交流戦の大阪ジャガース戦で、9回表1アウトで代打起用された俺は、エース前村からライト線へノーヒットノーランを阻止するプロ初ヒット。
そこから怒涛の9打数連続ヒット。
その後も、苦戦するチームの中で、主に繋ぎ役として2番レフトでコンスタントに起用され、一時は打率が4割3分にまで到達した時期もあった。
しかし、後半戦開始から揺り戻しというか、確率の収束というか。
全くヒットが出ない時期があり、打率を3割5分まで下げたのだが、そこからが俺のショータイム。
3試合連続猛打賞。1試合5安打が全てライト前ヒット。
ラッキーな内野安打だけで4打数3安打など。
ある意味俺らしい猛爆っぷりで、8月20日の誕生日を境に再び打率が4割に乗った。
5打数2安打で現状維持。3打数1安打では打率が下がるというなんともしがたいところをさ迷い続けながら、つい10日前。
プロ初ヒットから100安打到達までが、243打数というプロ野球記録をひっそりと表彰され、このままいけば、日本プロ野球史上初の4割打者が誕生か!?
などと、取材を受ける回数も増えたし、新聞でもそんな記事を目にするようになってきたのだが。
シーズン打率4割達成に、あまりにも重要すぎる問題点が1つ浮かび上がった。
それに対して試合前、ビクトリーズスタジアムに入ると、何人かの記者に囲み取材を受けた。
下は試合用のユニフォーム。上はトレーニングウェア。
タオルや替えのアンダーシャツなどを入れたリュックを背負った状態でグリグリ眼鏡の女性記者に、ベンチ裏の取材エリアで呼び止められたのだ。
「はじめまして。週間東日本リーグのビクトリーズ担当大本です」
呼び止めた女性記者がペコリとお辞儀をする。年齢は同じくらいだ。
「どうも」
「関東スポーツペーパーの斎藤です」
「どうも、どうも」
「週間スーパーベースボールの佐々です」
「どうも、どうも、どうも」
他の記者達も順番に軽く挨拶を済ませる。
「早速お話を聞かせて頂きたいんですが、新井さんはこのままだと、打率4割を打っても規定打席には届かないんですが、ご存知です?」
「ええ、なんとなく。細かい数字までは把握してませんが、なんとなく無理っぽいなっということは分かってます。まあ、仕方ないですけどね」
「起用のされ方についてはいかがですか? シーズン序盤にもっとチャンスを与えられていればと、よく言われていますが」
「まあ、元々は1番実績がない人間ですからね。去年の今頃は、パチンコ屋に勤めていたわけですから、チャンスをくれた監督やコーチの皆さんには感謝しかないですよ」
「しかし、打率4割はまだ日本プロ野球界では未知の領域でしたし、新井さんの記録に期待していたファンも多いと思いますが」
「打率4割を打てば必ず優勝できるならこだわりますけどね。……重要なのは打率4割を達成することではなく、毎試合ベストを尽くして、少しでもいいプレーをファンに見せて、応援していただくことですからね。打率4割は、ゲームの得意な人にお任せしましょう」
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