CM撮影する新井さん
〈おはようございます〉
ピコリン! と音がして、ミニテーブル横に固定されたタブレットにメッセージが現れた。
このメッセージとやりとりすればいいんだよね。
「おはようございます」
俺は椅子に座り、モニターに向かって少し前のめりになりながら、膝に両手を当てる。
〈はじめまして。あなたの講師を務めるマイプロ先生のマイコよ〉
モニターがピコリンとなると、メッセージと一緒に女性キャラクターが出てきた。
スーツ姿。薄い青色の長い髪の毛。教鞭を持ったクール系巨乳女教師が出てきた。
「はじめまして。よろしくお願いします」
〈あなたはマイプロをプレイしたことはあるのかしら?〉
「一応、ちょこちょこと………」
〈分かったわ。それでは早速プレイしましょう。目の前にスマートフォンを手にしなさい〉
俺は返事をして、ミニテーブルに置いてあるスマートフォンを手にした。
真っピンクのスマホカバー。北関東ビクトリーズのロゴと、マスコットのビック君とトリーズちゃんのイラストも入っている。
「すごい、これ見て」
俺はスマホをカメラに向ける。
「このスマホカバー、ビクトリーズ仕様ですねー。初めて見ました。………これ売ってるんですか?」
ディレクターが売ってますよと頷く。
「え? どこに? ………あ、ファンショップで売ってるんだ。すごいな。ちょっと欲しいっす!」
〈余計なこと喋らないでちょうだい。早くアプリを立ち上げるのよ〉
「はーい、すみませーん」
〈もっとシャキッとしなさい!〉
「はい! すみません!」
〈まず、ベースチームを設定して、初期メンバーガチャを引くのよ〉
「えー、まずはベースチームか……」
東日本リーグ、西日本リーグに所属するチームの他に、自分の好きな地名を設定して、オリジナルチームを作ることも出来る。
一応俺はマイコ先生に訊ねてみた。
「えっと、ベースチームはビクトリーズでよろしいです?」
〈あなたは、どこのチームの野球選手なのかしら〉
「北関東ビクトリーズです」
〈そうよね。北関東ビクトリーズに所属しているあなたが、東京スカイスターズや埼玉ブルーライトレオンズを選んだりしたら、色々と大変よね?〉
「はい」
マイコ先生にちょっと怒られました。でも、気分は悪くないです。
〈それじゃ、早く進めてガチャを引きなさい〉
ちょっと見所を作れたので、俺は黙ってスマホを操作して、ベースチームを設定する。
ベースチーム 北関東ビクトリーズ。
ホームタウン 宇都宮市
ユーザー監督名 新井時人
ベースチームを設定しました。
監督。まずは、あなたの新設したチームに加入してくれるメンバーを迎え入れましょう!
下の初期メンバーガチャるのボタンを押して下さい。
ピコリン!
ガチャるのボタンを押そうとすると、マイコ先生からメッセージがきた。
〈このガチャには、あなたにふさわしい特別な仕様が施されているわ〉
「え!? 俺にふさわしい仕様ってなに?」
〈それは引いてからのお楽しみよ〉
「えー、なんだろう」
俺は少しワクワクしながら、ちょっと目線を上げてディレクターの顔色を伺いながら。
今だ!というタイミングで手にしているスマホを操作して、画面下に表示されたガチャるボタンをゆっくりと、ポチッと押した。
すると画面が切り替わり、野球場を上空から見たような形になり、四方八方から、野球ボールがたくさん飛んできた。
全部がレア度ノーマルを表す真っ白の硬球だが、最後に夜空から飛んできたボールがレインボー。
レインボーは、プロ野球選手を表す最高レア度だ。
真っ白のボールから、能力最低レベルのモブキャラが10人現れる。
そして最後のレインボーボールがホームベースからカアンッとバットに打たれて、そのボールがレフトの守備位置に飛んでいく。
そのボールをバシィとキャッチし、激しい集中線と神々しい光の中から現れたのは………。
俺だった。
「すげえ! これ俺じゃん! マイコ先生、これ俺なの?」
〈そうよ。今回のアップデートで、あなたをはじめとした、開幕後に1軍で活躍した選手が新しく収録されるわ。あなたはその中の1人ね〉
「へー。ちょっと感動するなあ。ミートがBあるじゃない。あと特殊能力も………。アウトコースヒッターとか対変化球○とか。……そういう特殊能力もあるんだね」
〈早速そのあなたを打線に組み込んでおきましょう。そして、チームトレーニングを行うわよ〉
俺は指示された通り、自分自身を2番レフトに設定。
早速チーム練習を行う。
投手にはコントロール練習。野手にはバッティング練習をさせる。
チーム練習は1週間単位で行い、選手キャラクターがグラウンドで練習している様子をとりあえず眺める。
1日過ぎることに、選手の経験値を表すバーが増えていき、それがいっぱいになると、ピコリーン! と音が鳴って、選手のステータスが上がった。
そんなチーム練習の3日目。
練習している選手の1人に…………マークが現れた。
〈これは選手に何か悩み事があったり、行き詰まっているのよ。選手をタップしてみましょう〉
ピコっと選手をタップすると、選手との会話イベントに。
「実は、球場近くのコンビニに、気になっている女の子が働いているんです……」
選手が練習に集中出来ていないようだ。
どうアドバイスしますか?
1、すぐに告白させる。
2、お前には無理だと練習に戻らせる。
3、今度の試合にその女の子を招待させる。
そして選択肢が現れた。
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