スマホの野球ゲームで遊ぶ新井さん

「ねえ。でもガチで、いいカラダしてるのは誰?」


せっかく俺の小気味いい小ボケで終われるかと思ったのに、ギャル美がまた話を蒸し返す。


「ガチでいうと…………桃ちゃんかなあ」


「桃ちゃん? ライトの桃白? えー、そうなんだ、結構細身じゃない?」


「ユニフォーム着てるとね。スリムはスリムなんだけど、1番ムキムキだよ。結構ダントツで。なんか大学時代に目覚めたらしくて。今でも、試合の前と後に1人でトレーニング室にこもって、筋トレしてるくらいだからね」



「へー、そうなんだー」



「新井さん、新井さん。ピッチャーの方はどうなんですか? 連城さんとか、碧山さんとか」


「だいたいみんないい体つきしてるよ。連城君とか千林くんとか。あとキッシーとか。150キロ越えるような速いボール投げるようなやつは、やっぱりやべー体してるよ」



「すごいですねー」


「一応メモろう。小説ネタになるかも……」



メモりん………じゃなくて、みのりんがさっと分厚いメモ帳を出して、何やら書き込んでいる。


一体今の話の何を書き込んでいるのだろうか。


ギャル美のサラミに手を伸ばしながら、チラリと覗く。


「新井くん。見ないで」



ちっ。



「まあ、ともかくね。プロ野球選手はだいたいみんないいガタイしてるよ。お腹がプヨプヨ気味なのは、俺とロンパオちゃんくらいなもんで」



「「まあ、そうよねー!」」



3人してハモってんじゃねえよ。







「はー、食べたー。ごちそうさまー!」


「はい、お粗末様」


大皿に山盛りだった、みのりん特製唐揚げを腹いっぱいに食べたた俺は、そのぷっくり膨らんだプヨプヨ気味のお腹を優しく撫でる。


「よーし、みんなでマイプロやりましょー」




その横で、椅子の上で三角座りになりながら、空になりかけのビール缶をくわえたギャル美がスマホを取り出す。



「おっ、負けませんよー!」



「私も。新オーダーで2人をぶっ潰す」


それに合わせて、みのりんとポニテちゃんも自分のスマホでピコピコ弄り始める。


みのりんさんは、ちょっと言葉が汚いですわよ。


ちなみにマイプロとは、最近配信されたプロ野球のスマホゲームだ。


自らがプロ野球チームのオーナーとなって、選手を集めて育成し、時には試合を采配しながら勝利を目指し、理想のチームを作り上げるシミュレーションゲーム。



3人はそれぞれのスマホを握りしめて、夢中でゲームを楽しんでいる。


「あ、やった! 投手ガチャでプロ選手出たわよー」


空になった缶をテーブルに置きながらギャル美がガッツポーズ。


「え? 誰ですか!?」



ポニテちゃんがギャル美のスマホを覗き込む。



「えっとね…………大阪ジャガースの二村……だって」


「誰ですか?」



「さあ」



マイちゃんのスマホを覗いた他2人の顔色が曇る。3人にとっては全然知らない選手のようだ。


「新井くんは、この選手知ってる?」



「もちろん」



「ふーん」




このニワカ3人娘め。








「あーん、10連ガチャ2回回したのに、全部アマチュア選手でしたー」


食い入るようにスマホを握りしめていたポニテちゃんが、のけ反りながら悔しがった。


「またガチャポイント貯め直しですよー」


のけ反った一瞬、ポニテおっぱいがぐーんとすごいことになったぞ。


こっちのポイントも溜まっちゃうての。


「私、10連ガチャ5回回したのに、独立リーグ以上の選手出なかったよ」


みのりんがこの世の終わりみたいな顔をしながら、食後のお茶を啜る。


「私も、さっきのがスタンダード選手ガチャで出た初めてのプロ選手だし……でも、他がみんな大学生以下のアマチュア選手だから、即エースよ」



「えー、プロ選手いいなー。能力はどんな感じですか?」


「えっとー。MAXが148キロでー、スタミナCコントロールD。変化球がカーブ3のフォーク2よ」


「今だったら十分強いですよねー。私のチームのエース、130キロでスライダー1カーブ2ですよ。コントロールもFですし。でも、今のところ1番強いです」


「私は今ところ、130キロ出る先発ピッチャーいない」



とか、不満を言いつつ、なんだかんだで3人はきゃっきゃっしながら、互いにスマホを覗き合ったりして、楽しそうにマイプロで遊んでいる。





マイプロのすごいところは、日本一のスマホデフレゲームと自ら謳っていることだ。


他にもプロ野球ゲームはスマホだけでもたくさんあるのだが、マイプロはとにかくプロ野球選手がなかなか手に入らないのが特徴。


コンピューターや他プレイヤーとの試合で手に入るポイントでのスタンダードガチャでは、プロ選手が出る確率は1%以下。


ほとんどがモブキャラみたいなアマチュア選手ばっかりが出てしまう。


さっきのマイちゃんのようにプロのピッチャーが出るのは珍しい類いなのだ。


しかし、それがマイプロの面白いところ。


選手1人1人の能力ディテールが細かくなんとその数200種類以上。



打撃だけでも、従来のミートいくつ、パワーいくつの中には……。


引っ張り、流し打ち時の上手さ。


左投手の得意度。


チャンス時のパワー、ミートの増減


ナイトゲームでのパワー、ミートの増減。


ストレート時のパワー、ミート、変化球時のパワー、ミート。曲がる系、落ちる系、チェンジアップ系でのパワー、ミートの増減。


ドーム球場でのパワー、ミートの増減。


と、これでもまだ全部ではなく、データ好きなら、そんな細かいディテールを眺めるだけでもだいぶ楽しめてしまう作りになっているのだ。










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