試合後に、トンカツ食べる新井さん3

フリーバッティングでよく打つといえば、イタリアンベースボールマンであるシェパードもそう。


試合前の打撃練習ではとにかくよく打つ。なんせ192センチという恵まれた体格。長い手足も筋骨隆々で格闘家みたいな体つきをしてやがる。


そんな彼がグリップを目一杯に握って、フルスイングし、芯食った打球はスタンドに向かって面白いように飛んでいく。


多分ホームラン競争をしたらチームでは間違いなくナンバー1。


ああ、ほんとに打撃力だけでメジャー昇格まであと1歩のところまでいったという実力はは伊達じゃないんだなと、関心させられる部分はある。


しかし、柴ちゃんもシェパードもそうだが、それはあくまでも打撃練習の話。


元プロのコントロールのいいおじさんが打ちやすいコースに打ちやすいボールスピードで投げてくれるんだから、そりゃ打てる。


スタンドまでは届かないが、俺だってそんな風に投げてもらえばカツンコツンと打てますよ。


しかし、いざ試合になれば、ボールのスピードも威力も段違いなのはいうこともなく、当然エグい変化球も駆使してくるわけですかり、そうなると柴ちゃんもシェパードも試合なったらクルックル。


2人で東日本リーグの三振王を争っているところまでいってしまっているんだから、飛んだお笑い草だ。


目も当てられない。







「ごちそうさまー!」


「ありがとうございましたー! またよろしくお願いしまーす!」


ダブルロースカツ定食に特盛ライス2杯。エビフライにメンチカツ。そして大盛りカツ丼をぺろんと平らげた俺。次回ご飯大盛り無料のクーポン券をもらいながら、颯爽と席から立ち上がる。


向こう側に座る3人の会話も……。


「ビクトリーズがこんなに弱いんじゃ、あとは新井がほんとにこのまま4割打てるのかどうかだけが楽しみだな」


「そうっすね。うちの大学の野球部にいる友達に、新井を参考にして右打ちしてるやつもいますよ」


「4割はさすがにないだろ。よくて3割切るか切らないかくらいだよ」


「いやー、もうちょい打つだろー」


というそんな会話に落ち着き、それほどまずい展開にはならなかったので、わりといい気持ちで店を出た。




もう夜遅いが、7月の夜は暑い。腹いっぱいとんかつ食った満腹感と試合後の火照った体の熱のかけ算。


時折吹く、日光山からの心地よい風を感じながら俺は帰り道にある24時間営業のスーパーに足を踏み入れる。



そして迷うことなく、駄菓子コーナーへと向かった。


そして買い物カゴの中に……。


10円ガム。すもも漬け。カラフル餅。すもも漬け。スーパーロングチョコ。すもも漬け。しゅわしゅわペロペロキャンディ。すもも漬け。酢だこ三太郎。すもも漬け。


とてもバランスのいい駄菓子のチョイスだ。



しかし、それはあくまで前座でしかない。



本命はこの棚だ!!



今日発売のオンライン対戦用プロ野球選手カード入りのポテトチップス、マイプロチップスだ!!









売り切れ。ごめんネ!というPOPが棚に刺さっている。











なに!?










売り切れだと………!?








満腹なのにスーパーに来たのは、マイプロチップスが目当てだったのに。


マイプロとは、最近配信されたオンライン対戦型プロ野球アプリ。


自らは新規参入したプロ野球チームのオーナーとして、選手の育成、試合での采配、チームのマネージメントなどを行い、日本一の球団を目指す。


育成選手を含む、約900人のプロ選手はもちろん、独立リーグ、社会人、大学生、さらには甲子園に出場した現役高校生も登場する豊富な選手数がウリ。


プロアマ合わせて総勢2000人以上野球選手から自分だけのオーダーを組んで常勝軍団を目指すのだ。


そしてマイプロチップスには、1袋に2枚のカードがおまけとしてついており、今は期間限定で必ず1枚はプロ選手のカードがついている。1袋70円。


新発売! のPOPの横に、売り切れ。ごめんネ! のPOPがあり、他のお菓子は棚いっぱいに陳列されているのに、ここだけぽっかりと空いてしまっている。



「すみません。さっき、段ボールごと購入された方がいらっしゃいましてー」


店員さんに聞いてみると、そんな返事が返ってきた。


まさか段ボールごと買い占めるやつがいるとはな。


ちょっと計算外だったな。


まあ、俺も買い占めようとしていたけど。


今仕事してるみのりんにおやつ買っていこっと。

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