どうしてエラーしてしまうん?

「東北レッドイーグルスと北関東ビクトリーズの初対戦となりましたこの3連戦もいよいよ大詰め!同点で8回ウラ、2点を追います東北レッドイーグルスの攻撃は、トップバッターから始まります。北関東ビクトリーズもここまで好投の碧山に代わりましてセットアッパーの染谷がマウンドに上がりました。ここまで4試合の登板で無失点ですねえ」


7回1失点と十分に好投したドラフト2位ルーキーの碧山君。打線もなんとか3点を取り、プロ初勝利の権利を得た彼が、アイシングバンドを左肩に装着してベンチに戻ってきて、俺の近くに座った。


「碧山君、いいピッチングだったじゃない」


「ありがとうございます。結構まっすぐが走ってたんで」


「そうだよね。ストレートは大事だよなー。あれだけ低めに投げられればチェンジアップがより生きるよ」



カアンッ!!


「いい当たりもショート正面!! あっと、ショートの赤月が弾いた! 拾い直しますが………投げられません! ………記録はショート赤月のエラーです」








カンッ!!


「打球はレフトへ! いや、ショートか? いや! レッドシェパードが前進して飛び付きましたが落ちました!赤月がボールを拾いますが、2塁は間に合いません!!記録はヒット!ノーアウト1、2塁になりました」


あー、打ち取った打球がショートとレフトの間にポトリ。


ベンチから見ていた感じだと、最後までどっちが取るのかはっきりしなかったような、半分お見合いしたようなもったいない守備だった。


レフトがシェパードじゃ連携取りにくいのも仕方ないけど。ピッチャーがせっかくいいとこに投げて打ち上げさせたんだから取ってあげないと。


ルーキーの初勝利がかかってるんだし。俺がレフトだったら赤ちゃんをどかして強引に取りいってるわ。


「ここは吉野ピッチングコーチがマウンドに行きました。まずい守備が2つ続きましたからここは少し時間を取ろうという考えでしょうか」



「そうですねえ。しかし、2点リードでもう8回ウラですから、出来ればレフトのシェパード選手のところに守備固めを使ってもいいと思うんですけどね。もうビクトリーズには外野手の控えはいないですか?」


「一応ルーキーの新井が外野手登録の選手ではベンチに残っていますが………この場面でも使うことはなさそうですねえ」


「今のビクトリーズは8連敗中なわけですから、あと2イニング守れば勝ちなわけですよ。ここは出来ること全部やって守りにいかないと。シェパード選手より守備が悪いわけではないでしょう?」


「ええ。吉野ピッチングコーチがベンチに戻りまして試合再開です」





「これはゲッツーコース!! あっ、サードの阿久津が弾いた!! 拾って送球! 1塁はアウトです!!1アウト2、3塁です」


低めの変化球を引っかけさせて、サード正面のゴロ。おあつらえ向きのゲッツーコースだったが、サードの阿久津さんがこの打球をジャッグル。


慌てて1塁をアウトにするのが精一杯でピンチ継続。


そして………。


「打ちました! 高いバウンド! ファーストの頭の上を越えました!! 」


ましても負の連鎖。次のバッターの打球は人工芝で高く跳ね上がりファースト高田さん頭の上を越える2点タイムリー。さらにランナー2塁になったところでさらにもう1本ヒットを浴びてあっさり勝ち越し。


俺はもううなだれて、やってられんと、ベンチで横になることにした。



「新井、そこで寝るな。後ろでバット振ってろ」

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